neta
□明久とバカテス一話もどき。
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心機一転席替えて、窓辺が私の住所となった。古びた丸い机、ちゃぶ台と畳と暖かい陽射し。学校も終わって帰ろうと掴んだ鞄をちゃぶ台の上に一旦置いて、そこに額を押し付けた。
日に当たっている部分がぽかぽかして気持ちが良い。放課後の騒がしさの心地よいBGMが耳を掠めていく。あと三分したら帰ろう。
突っ伏すには邪魔なめがねを畳んで、鞄を抱くみたいにして顔を窓辺に向ける。あたたかいひざしがやさしくてまぶしい。
「……えーっと、矢津さん?大丈夫、どこか具合悪いの?」
ぬくぬくした気持ちは、そんな言葉に遮られる。舌打ちしたくなるタイミングだ。気だるい体を起こして振り返ると、誰かが私を覗き込んでいた。視界はぼやけて見えづらい。誰なんだ。数回瞬きをして、眉間にしわが寄る。
「矢津さん、メガネ…」
「そっか」
どうりで見えづらいと思ったわけだ。眼鏡をかけて改めて向き直ると、そこにいたのは“ある意味”この学校で一番有名な人だった。
「あー…あきよしくん」
うろ覚えの名前をつぶやくと、あきよしくん(仮)は固まった。
「大丈夫、ちょっと眠たかっただけなんだ。心配ありがとうひさのくん(仮)」
「ちょっと待って(仮)ついてるから!僕の名前は!吉野!明久!だから!」
「わかった。よしひさくん。また明日ね」
「ちっがぁああああう!!」
軽くボケると、全身全霊でツッコミを入れられた。
このひと、おもしろいな。