neta

□愛は全てに勝る(燐)
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「燐、私と契約して、使い魔になってよ!」

にっこり。どこかのインキュベーターよろしく心から溢れる友好的笑顔を包み隠さずそう伝えると、彼は一瞬にして視界から逃走した。

「あらやだ。照れ隠しかしら…」

「照れ隠しではないと思いますよ、藍さん」

「雪男君!」

一部始終を背後で一部始終見ていたらしい奥村家次男、雪男君が困ったように眼鏡を押さえていた。

「藍さん、人前で兄の事を使い魔と呼ぶのはちょっと…」

「ああ、なるほど。でも大丈夫だと思うよ。端からみたら熱烈アプローチが変な方向に行ってる女の子と付きまとわれてる哀れな男の子にしか見えないからさ」

ね!と笑うと雪男君は眼鏡を押さえる。レンズが全反射して表情が読めないが、おそらくどう対処していいか分からないのだろう。
――燐が悪魔だと私が知った時、こんなことになるとは思わなかっただろう。燐も、雪男君も。
魔神の落とし子を、怖がるどころか使い魔にしたいだなんて。我ながら変人だと思わざるを得ない。

「ま、惚れたもん負けってことでしょうがないね。」

「そうですか…。」

「ちなみに理事長からはオッケーもらってるからそのつもりで☆」


雪男君が眼鏡を押さえたまま固まった。






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