Neta

□お年頃な遊星と
1ページ/1ページ




目が覚めると薄暗かった。
そういえば作業中の遊星を茶化しにきた筈が誰も居らず、暇をもて余しているうちにガレージで寝付いてしまったような気がする。
固いコンクリートの上で寝ていたために、体のあちこちが体が緊張して痛みを発信していた。そんな節々の痛みをごまかしながら立ち上がって、思いっきり伸びをする。

「んぁっ…ん、ふ、んんぅっ…」

これなんて喘ぎ?
誰かに聞かれでもしたら恥ずかしさに死ねるが、まあ一人だし良いかな、と続けて凝り固まった腰をひねる。
ゴトン、背後で重たい何かが落ちる音がした。

「あ………」
「………」

背後に遊星がいた。
私は上半身をひねったままの体勢で、彼は突っ立った状態で見つめあう。お互い石像になったかのように硬直化。
私の黒歴史が決定した瞬間であった。


「お、おはよう遊星」
「……あ、ああ。おはよう」

いや待て、もっとフォローすべき事があるだろう私。
遊星の足の甲にはスパナがめり込んでいる。あの硬そうなブーツが押されて潰れていた。さっきの音はこれだったらしい。動揺して取り落としたということだろう。
何に動揺したのかなんて、愚問。

「よし死のう」
「ま、まて早まるな!ぐっ」
「大丈夫!?」

スパナの刺さった足を押さえる遊星。慌てて駆け寄る。やっぱり痛かったよね、そりゃそうだよね!

「ごめん、変なの聴かせて本当にごめん!
私のせいで足が…遊星の足が…ズキズキする?ジンジンする?」
「そんなに気に病むな、大したケガじゃない」
「ゆうせぇ……っ」

私なんかの似非喘ぎをきいて軽蔑するそぶりを見せず、なおかつ諸悪の根源を気遣う優しさ。涙が出そうだ。

「このままだと腫れちゃうね…。今冷やす物持ってくるから、脱いで」
「脱いで…」
「なんでジャケット!?落ち着け、ブーツだよ!」
「そうだな、すまない」

大丈夫だろうか。頭まで打ったんじゃなかろうか。氷を取りにいく途中、何度も振り返る。遊星は耐えるようにしゃがみこんだままだった。


_

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ