土沖1
□紫苑に染む
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総悟から手紙が届いた。
返事もろくすっぽ寄越さないあいつから。
字は人を表すと言うが、
見かけに寄らない整った几帳面な字で、
宛名がつづられている。
あいつは表向きはドSの性悪だが、
本当は素直で、誰よりも繊細で。
優しいことを俺は知っている。
久々にまじまじとアイツの字を見て、
ふとそんなことが浮かんだ。
畏まってなにを書いて寄越したのかと、
封を開けてみると……
青く小さな花が一輪出てきた。
見たことがあるような、
ないような………
田舎のあぜ道にどこにでもありそうな、
ごく普通の野花という感じだ。
――――何か意味でもあるのか?
もう一度封筒の中を確認してみるが、
やはりなにもない。
俺の誕生日に花でも贈ろう………ってことか?
あいつらしくもない。
一体どういう風の吹き回しだ?
何にせよ、総悟が俺に寄越したものだ。
素直にうれしい。
花が傷つかぬよう丁寧に包み直し、
大切に文箱に仕舞うことにした。