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□耳まで真っ赤
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夏休みはじめに、親友が学校のマドンナと旅行に行ってしまった…いいなぁ…と、嘆いていた男を見る。
宿題を見せてくれと言い、わたしの部屋にずかずか入ってきた敬。
テーブルに片肘をつけ、涼しい顔をしながらわたしの英語のプリントをめくっている。
…OZで、何やら大事件が起きたと掲示板に書き込みが多数あった。
気になって、その書き込みを目で追った。
だけどその事件の内容を知った時には、もうOZ内も普段通りの日常を取り戻していた。
幸いにもわたしはその時期には九州の祖母宅で、ネットとは無縁の日々を過ごしていたので、まったく被害はなかった。
この男を見てると、蚊帳の外にいたことを後悔する。
出校日の日に、わたしがいなかった時期になにをしていたかと問うと敬は捲し立てるように、当時のことを語った。
今はその後どうなったのか聞いてみた。
「で、世界有数のメディアがこのことを取り上げてさー、OZの管理体制に問題が…」
『…へぇ……』
出校日にこいつは渦中の事件の中心にいた、と豪語していた。
嘘や真実が混ぜられている掲示板ではそんな噂は流れていなかったが。
『…小磯くんも同意していたしなぁ』
嘘なんて言わないであろうお人好し数学少年にイエスと言われては信じるしかない。
ぽつりとつぶやいたわたしの言葉が聞こえたのか、敬が反応した。
「名前は健二のことは信じんのかよ」
『あんたが今までいくつ嘘をついてきたか知らなければ信じたかもね』
長年幼なじみしていれば、こいつの思惑なんて知ったも同然。
『でも、ま、最悪なことにならずに済んでよかった、よ』
「だろ〜?俺を褒めてよ」
『偉かった、ね』
「…珍しく、素直じゃん」
『うるさいっ!』
顔を背ける。
今さらながら二人きりを意識してしまった。
いたたまれなくなり立ち上がり部屋をあとにしようとする。
「名前」
『…何』
「…名前に被害なくて、よかった」
耳まで真っ赤
(ああああんたもね!!)
(……やっぱ素直じゃない)
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