恋言葉
□一話
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入学式から数日、綱吉は未だにクラスに馴染めずに居た。
小学校の頃から偶に話している奴らは居たが、そいつ等に話しかける勇気が無い。
―――如何しよ・・・
頬杖を突きながら綱吉は窓の外を見る。
あの学ランを着ていた人にも逢えないし、クラスにも馴染めない。
綱吉は、完全に孤立していた。
「沢田・・・君?」
可愛らしい声が後ろから聞こえる。
綱吉が振り向くと、其処にはふんわりとした感じの美少女が居た。
「え、俺?!」
「うん、沢田君。名前、綱吉君っていうの?格好いい名前だね!」
そう言って向日葵のように明るく笑う。
「えっと、君は?」
「私は笹川京子!宜しくね、沢田君!」
「あ、宜しく・・・」
ニコニコと笑いながら差し出してくる手を見て、少し戸惑う。
―――此れは・・・如何するべき?
此方からも手を差し出すか、其れともこのままで居るか。
「京子ー!もう予鈴鳴るよー!」
「あ、うん!じゃあ、私は席に戻るね!」
そう言って京子は自分の席に戻っていった。
結局如何することも出来なかった綱吉は、己の優柔不断さに嫌気がさす。
大きな溜息を吐き、綱吉は教材を机から取り出す。
チャイムが鳴り、慌てて教室に戻ったり席に着いている輩を横目で見ながら、綱吉はもう一度、大きく溜息を吐く。
ああやって慌てられるのが羨ましい、と。
ガラリと教室の引き戸を開け、教師が入ってくる。
綱吉は軽く欠伸をし、また頬杖を突く。
どうせ聞いても覚えられないのだから、意味が無い。
其の時間は運よく当てられることも無く、綱吉はずっと校庭を眺めていた。
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