小説(レンリン)

□tell me why(リン視点)
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12月の中旬。
寒さが厳しさを増す中、街はクリスマスに向かって華やかさを増す。
どこを見ても、クリスマスの飾り付けがされていた。
十字架を見つけて、私はふと、ある場所を思い出した。


「そういえば、レン。今年も行くの?」


私は、隣を歩く双子の弟に聞いた。
首に巻いたマフラーを巻きなおしながら、レンは「そうだな」とうなずいた。
どこに、とは言わなくてもわかったようだ。
まあ、この時期に行く場所なんて決まってるからわかってて当然なのかもしれない。


「行かないといけないだろうな・・・何?
リン、用事でもできたの?」
「ううん。レンのほうこそ、彼女とどっか行ったりしないの?」


彼女、という言葉に、自分で言ったくせに軽い痛みを胸に感じた。
いけない。
早く弟離れしないと・・・



「彼女なんていないよ。リン、知ってるだろ?」
「知ってるけどね。いや、ほら。レン君もお年頃だしさー」



おどけたように、笑ってみせる。
お年頃。
そう。
もう私もレンも14歳だ。
いつ彼氏や彼女ができてもおかしくない。
現に私の友達の中にも、付き合ってる子は何人もいる。


「リンもお年頃じゃんか。彼氏、いないの?」
「いないに決まってるじゃん。いたらとっくに言ってるよ」


いたらよかったのに。
彼氏。
そんな言葉はのどの奥に飲み込んだ。



「じゃあ、今年も一緒に行こうよ!帰りにホールのケーキ買いたいな〜」
「はいはい。でも、チョコだけは勘弁してくれよ」
「えー。なんで?」
「前、自分で買ったくせに、食べきれないからって俺に後処理させたのは誰でしたっけ?」
「あー・・・」


そういえば、前にそんなこともあったっけ。
チョコケーキがいいと駄々をこねて両親に買ってもらったけど、結局チョコがくどくて食べきれずに、レンが全部食べてくれたのだ。
私はその時のレンを思い出してプ、と噴き出した。


「あの時相当苦しかったんだからな」
「ごめんごめん。じゃあ、今度はちょっと大人っぽくタルトにしようか。
レン、タルト好きでしょ?」


私がそう言うと、レンは少し頬を赤らめた。
なんか照れるようなこといったかな?



「レン君、顔が赤いですよ?熱でもあるの?」
「ない!ちょっと寒すぎるから・・・」
「ふふ。そっか。・・・あれ?」
「ん?どうし・・・あ」



私は頬に当たった冷たい感触に真っ黒な空を見上げた。
つられてレンも顔を上げる。
そして、気付く。
闇の中から振ってくる白い存在に。



「初雪だ・・・」
「本当だ。そういえば、天気予報で雪が振るっていってたっけ」



レンがぽつりとつぶやく。
私は振ってくる雪を手のひらにのせた。
雪の結晶は、私の手の上ですぐに水と化す。
どれくらい、そうして遊んでいただろう。
気付いたときには、手が冷たくなっていた。
はあ、と息を吐くと、ちょっと温まったけど、またすぐに冷たくなる。



「あー・・・霜焼けになっちゃうかも・・・レン、はやく・・・」


家に帰ってストーブに当たろう、と続く言葉は口から発せられることは無かった。


レンが私の手を握ったからだ。
私よりも少し大きくて、温かい手。
鼓動が、早鐘を打つ。


「片方しか無理だけど、我慢な」
「・・・うん。ありがと、レン」



レンの顔を見たけど、レンは向こうを見ていて、表情はわからなかった。
でも、さっきよりも赤くなっていることはすぐにわかった。
冷たかった手は、ほんのりと温かくなっていた。
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