小説(エドアル)

□SPICE!
1ページ/13ページ

「・・・ド・・・エド・・・」


遠くから、自分を呼ぶ声がした。
でも、眠りから覚めるのが嫌で、そのままでいると、今度は肩を揺さぶられた。
しぶしぶ重い瞼を開けると、青い瞳が俺を見下ろしていた。
ああ、そっか。とまだぼんやりとした頭で思い出した。
ここは、ウィンリィの家だ。



「もう、何度呼ばせるのよ。朝ごはんできたわよ。今日は軍に出勤するんでしょ?早く食べなさいよ」
「・・・ウィンリィ」
「何よ?早く・・・っ!?」


まだぶつくさ言おうとしたウィンリィの腕を引き、腕の中へその体を収める。
強く抱きしめれば、ウィンリィが体をよじった。


「ちょっと、いきなり何す・・・」
「ありがとな、ウィンリィ」


耳元でそっと囁くと、暴れていたのが大人しくなった。
後ろから抱きしめてるせいで、表情はわからないが、その耳は真っ赤に染まっていた。


「べ、別にいつものことでしょ・・・」
「そうだけど、何か言いたくなってさ・・・」
「・・・エド、あんた何で朝っぱらからそんな気持ち悪いこと言ってんのよ」
「・・・別に、素直になっただけだろ」
「ふーん・・・まあ、いいわ。早くしないと、朝ごはん覚めるわよ」
「ああ、支度したらすぐに行く」


ウィンリィの体を開放し、オレはそういった。
ウィンリィは、下で待ってるからね、と言って部屋から出て行った。
ありがとう、きっと何度言っても足りない。
でも、それ以上に。


「ごめんな、ウィンリィ」


俺が求めてるのは、お前のぬくもりじゃないんだ。
そっと呟いた言葉は、絶対に彼女には届かない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ