小説(朝菊)
□季節がいく時
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家の裏にある山に、イギリスは何気なく登ってみた。
特に考えは無い。
ただ、なぜか体が勝手に動いた。
ランプも持たずに、星と月の光を頼りに、ゆっくりと山を登る。
イギリスは暗幕の星々を見上げた。
その夜空にはどこにも雲の陰が見えなかった。
まるで、彼が自分を追いかけてきてくれた日の夜空のように。
「に、ほん・・・」
そっと、同盟相手だった国の名前をつぶやいた。
目を閉じれば息を切らして、それでも笑っていた彼の顔が脳裏に浮かんだ。
必死に守ってきた。
壊さないように。
初めてできた真面目で、誠実で愛しい同盟国である日本との関係を保つために。
でも、壊れてしまうのは一瞬だった。
必死に守り、大切にしてきたものは、一枚の紙切れによってあっけなく奪われてしまった。
『さようなら、イギリスさん』
『・・・』
寂しそうに笑った日本に、イギリスはなにも言えなかった。
ただ、目の前の現実を受け入れることが精一杯だった。
「ごめん、日本・・・ごめん・・・」
許しを請うように、イギリスはそこにはいない彼に何度も何度も謝った。
遅すぎる謝罪。
そして、ついに伝えられなかった本当の気持ち。
「好きだ、日本・・・好きなんだ・・・」
何もかもが遅すぎた。
どれだけ季節が過ぎ去っても、もう隣で彼が自分に微笑んでくれることはない。
イギリスは腕で両目を覆った。
まるですべてを拒絶するように。
そして、その腕の隙間から頬を伝っていく透明な雫には気付かないふりをした。
=あとがき=
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!
えっと、元ネタなるものは、某ボーカルさんが歌う「季節がいく時」です。
なんか歌聴いてるうちに、「これなんて英日!」
と興奮し、勝手に妄想と気力だけで書き上げてしまいました(汗
今回は英視点だったので、次は日視点を書きたいと思います。
では、また。