冬に咲く華

□2つの炎
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「ここは…屋上か。」


「こちらの観覧席は中から破壊しようとしたら爆発する仕組みになっています。」


「分かりました。」


一人、赤外線の檻の中で佇む。


「ザンザス…。」


二色のオレンジ色の炎がぶつかり合う。


「負けないで…って言いたいよ…。でも…言えない…。もう…やめてよ…ザンザス…。」


たとえ、ザンザスが勝ったとしても千絵には結果が分かっていた。


ザンザスは正当継承者にはなれない。


リングに拒絶される可能性がある。


ツナに勝ってもらうしか方法が無い。


ザンザスを傷付けずにすむ方法が。


その時。モニター越しに聞こえたツナの声に千絵は耳を疑った。


《零地点突破、改!!》


「…零地点突破!?嘘…それじゃあザンザスはッ!!」


遅かった。


すでに彼の両手は氷付けにされていた。


「嘘でしょ…こんなの…もう…やだよ。」


力無く座り込んだ千絵を知る者などいない。


《千絵を泣かせるなんて、俺はそんなことしない。》


再びモニターから聞こえたツナの声に千絵は顔を上げた。


《うるせぇ……カスが……ッ!!知った…ような口…聞くんじゃ…ねぇ…ッ!!》


《じゃあ、何故彼女を泣かせる!!お前たちはなぜ…》


ツナの言葉を遮ってあの声が聞こえた。


千絵が待ち望んだ、あの声。







《ゔぉ゙お゙い゙!!!好き勝手言うのもいい加減にしやがれぇ゙!!!》







「ス……スクアーロ………!?」


《今まで裏社会を生きてもない甘ちゃんに何が分かるんだぁ゙!?》


「スクアーロ…ッ!!!!」


伸ばした手が赤外線センサーに触れる。






そして通り抜ける。






「なっ!?」


一部始終を見ていたチェルベッロの一人が千絵を止めようとしたが、既に彼女はいなかった。






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