冬に咲く華

□雪の使命
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氷月を握る手が軽く震えている。



今日、私たちヴァリアーはイタリアにあるミルフィオーレの勢力を潰しに行く。



こっちの世界に来てから、初めての実戦だった。



「千絵、行くわよ。」



呼びに来たであろう青蘭の声がドアの向こうから聞こえる。



「今行くよ。」



青蘭はヴァリアーの雪の幹部となっていた。



まぁ…正確には私が本部にいる時はヴァリアーに、ヴァリアーにいる時は本部に、という影武者的な存在だったらしい。



そして、リング争奪戦の時の雪冷の諸刃で、相当な鍛練を積んだらしい。



「ねぇ、青蘭。」



「どうかした?」



前を歩く青蘭が後ろを振り返った。



「私は……」



「あんたの刀は何のためにあるの?」



「え…?」



青蘭が目で答えを促す。私は一番最近に思いついた答えをそっと口にした。



「大切なものを…守るため…。」



「正解。そうやってあんたはあたしに言ったわよね、リング戦の時に。」



「…。」



「氷月は傷つける刀じゃない。」



「うん…。」



「だからボックス兵器が出来た。アイビスはそのために生まれた。」



「ッ!?」



「これは戦いなの、千絵。犠牲を恐れてては必ず負ける。氷月とアイビスは千絵の武器。あきらめなさい…。」



「…でもね、青蘭。」



違うんだよ。



綺麗事だって分かってる。



そんなこと、非力な私じゃ出来ないってことも分かってる。



だけどね…。



「私は犠牲を出したくない。氷月に人を殺める技なんて無いし、アイビスに血を浴びせることなんてしたくない。白蘭だって…殺さずに、解決する方法があるはずだから。」



そうやって、私は生きてきたの。



だから今は無理でも…



きっとみんなを守ってみせるから。





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