冬に咲く華

□哀しき過去の旋律
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千絵Side



「なんでだろう…。」



月明かりが照らす部屋に一人。



”お前の母親は死んだんだ。”



”死体を処理する。邪魔だ。”



”出ていけ。お前は娘じゃない。”




「変なの…。」



娘じゃない…だなんて。



仮にも血を分け合った筈の人に?



「母親を…殺しておいて…。」



”千絵!!逃げなさい!!”



”母さん!!”



―――パァァァァン!!



”母……さん……??”



”千絵………ッ!!”



”嫌だ……嫌だよ……ッ!!!”


”…。”



”嘘だ……よ…ね??”



「嘘…じゃなかった…。」



「何がだぁ゙。」




ハッとして振り返る。



そこにはスクアーロが立っていた。



月明かりに照らされた銀色の髪が、彼をより一層美しくしていた。



「スク…アーロ…。」



「何で一人で泣くんだぁ゙。」



「泣いて…なんか…!!」



「泣いてるだろうがぁ。」



スクアーロが私に近寄り、涙を拭う。



柔らかい手つき。



温かくて大きな手。



「何があったぁ゙。」



「どうして……私は幸せになれないの…??」



「…。」



「欲張りだって………分かってる。でも…母親の温もりなんてもうどこにも無い…。」



「千絵…。」



「もっとたくさん……抱きしめて欲しかった。もっとたくさん……笑いたかった。でも、もう母はいない!!!」



「…。」



「分かってるよ…我が儘だってことくらい。」



分かってるよ……。



すると。



私はスクアーロの腕の中にいた。



「ス…ク…アーロ…?」



「我が儘じゃねぇ…。お前は正しいんだぁ…。」



「…。」



「黙ってろぉ。今は…思う存分泣けぇ。」



張り詰めていた見栄が壊れた。



足の力が抜ける。



それを感じたスクアーロはゆっくりと私を床に座らせてくれた。



それでも私を強く抱きしめてくれた。



温かい…。



そう思った。




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