光を追って…。
□イタリアにあるレストランA
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「ふぅ…。」
4本のワインボトルを前に溜息をつく女性。
白い肌に特徴的な翡翠色の瞳。漆黒でストレートの髪が開け放たれた窓から入ってくる風に揺れていた。
「赤で…強い…ですか。また無茶な注文を…。」
「無茶な注文なんてなれっこでしょ〜?」
明るい声に彼女は本日2回目の深い溜息をついた。
「…いつ入ってきたんですか。」
「さっきだよ。気配感じられない程、悩んでるわけ?珍しい。」
先程の明るい声の正体はクスクスと笑った。その度に茶色のショートヘアが揺れた。そして澄んだルビー色の瞳が悪戯っぽく光った。
「誰のせいだと思ってるんですか。」
「少なくともあたしじゃないし〜。オーダーした人だからねん。」
「……少し、悩みすぎましたね。このワインに決めました。」
「あいさ。あとは任せなさいな。」
「もう限界です…。」
「あれ〜イタリア屈指のソムリエさんが何を言うか〜。」
「とりあえず、口を閉じましょうか。見習い料理人さん。」
「…この地位の違いが痛い…。」
「格が違うんですよ、格が(爽笑)」
「こえー…。」
「あ…そうそう…。
準備、しといてくださいね。」
「………りょーかい。」
「少し寝てきます。」
「ん〜。おやすみ、亜依。」
「おやすみなさい、花音。」
まるで以心伝心したかのように上手く二人の手の平があたる。乾いた音がした。
「起こすのは??」
「そうですね〜…出来れば来客の30分前にお願いします。」
「ん。了解したよん。」
二人は知らない。
このあと来る客が…イタリア…いや、世界中に名を轟かすマフィアの幹部達
ということを。
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