冬に咲く華

□闇色の過去
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「千絵、よく聞いて。」



「なぁに??」



「母さんが出ていったら…ドアを決して開けてはいけない。」



「…???」



「開けない、と約束してくれる?」



「…うん。」



「いい子ね…千絵、貴女は私の誇りよ。」



「母…さん…??」



「じゃあ、後でね。」



万音は静かに部屋を出た。



下に続く階段を降りようとしたその時。



下から階段を上ってきたのは、千絵の父、琴塚の当主だった。



「何故?」



「いっそのこと、お前達は殺してしまおうと思ってね。その方が良いだろう、親子仲良く逝けたら。」



「認めません。私を殺して彼女を逃がす、という約束ですから。」



「フン、お前が死んでしまえばもう終わりだ。全てが終わるんだよ。」






彼はなんのためらいもなく、銃の引き金をひいた。



弾丸は部屋のドアを守る万音の胸に当たった。



そして…。



ゆっくりとドアが開いた。



「千絵……逃げなさい…!!」



「母さん!!」



再び銃声が響いた。千絵に覆いかぶさる様に万音は体を動かして千絵を銃弾から守った。



「母……さん……??」



「………枕…の…下を……。」



「嘘…だよね…。」



千絵は呆然とした。



そして涙が一筋伝った。



「…死体の処理をする。邪魔だ。」



蹴られた千絵は部屋の奥まで飛んだ。


「…嘘…母さん…。」



千絵の頭の中に、万音の最後の言葉が繰り返される。



「枕の…下…。」



ゆっくりとベッドの枕の下を見る。



「何…これ…。」



そこには携帯電話と一つの封筒。



千絵は封筒を開いた。



千絵へ

母さんの言うとおりにしてね。


まず、イタリア語で下の番号に電話して。







言うとおりに千絵は携帯電話に番号をいれて通話ボタンをおした。



『万音さんかな??』



優しい男の人の声。



『万音の…娘の…千絵です…。』



「千絵ちゃん…ッ!?」



急に日本語に切り替わる。



「母さんは…殺されました…。」



「ッ!?……今、千絵ちゃんは一人かな?」



「…はい。」



「すぐに君を助けに行くからね。」



「あの…貴方はだれ…??」



「私は…ボンゴレファミリーの九代目ボスだよ。君のお母さんがいたところのボスだから安心して。」



千絵の目から涙が溢れた。



母の居ない実感が今更になって押し寄せてきた。





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