モンスターハンター 蒼風の導き
□第三章 狗竜再び
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「ねぇ、大型モンスターを狩猟するって、珍しいことなの?」
ここで、シアの頭の中に一つの考えが浮かんできた。
それは、シアの村にベテランのハンターが来て、ずっと村に迷惑をかけていた大型モンスターを狩ったときの、村人たちの表情だった。
あの時との村人たちの表情と、今のユクモ村の人々の表情が重なって見えるのだ。
「大型モンスターですか?う〜〜ん。初めてではないですけど」
ここで、一つため息を吐く。だが、
「でも、村のハンターが狩ったのは初めてですね」
「………なるほどね」
リナの一言で、すべてに納得することができた。
つまり、ユクモ村の人々は、ハンターが大型モンスターを狩ったから喜んでいるのではない。村に常駐してくれているハンターが大型モンスターを狩ったから、喜んでいるのだ。
これまでは、温泉を求めてやってくるハンターだったり、ふらっと立ち寄ったハンターにお願いをして大型モンスターを狩っていたのだろう。村のハンターは、小型モンスターばかりで、何もしていないことに等しかったのだろう。
でも、ここでシアは気になることを思い出す。
現在、この村の常駐ハンターは三人。シア、ミリカ、ギエンだ。
ギエンは訓練所を卒業したばかりなので、大型モンスターの狩猟は認められていない。それ以前に、シアはハンターとして認めていないから、除外である。
気になるのは、ミリカのことだ。
ミリカの装備は、マカライト鉱石という青みを帯びた鉱石を中心に作られている。
いうなれば、それなりに経験を積んだハンターが装備するものだ。
というのも、ハンターの装備品というものは、他人からの譲渡は認められていない。素材の中にも、どこでも手に入るものを除き、譲渡は禁止されている。自分で素材を集めなければ、装備品は作ることができない。
それなりに防御力の高い武具を装備するということは、それ相応の狩りをこなしてきていると言っても過言ではない。
だが、今リナは村常駐のハンターが大型モンスターを狩ったことがないと言った。
つまり、ミリカは大型モンスターを狩猟せずに、多くの素材を集めたということなのだろうか?
「ねぇ、ミリカって何年くらいハンターをしてるの?」
「ミリカさんですか?彼女は、大体一年くらいだと思いますよ」
「一年か。その間に、大型モンスターを狩猟したことは」
「ありませんね。狩りに行ったことはありますけど、成功したことは一度も」
「そうなんだ」
「でも、ハンターさんとして依頼はしっかりとこなしてましたよ。薬草集めとか、ジャギィを狩ったり。ギエン君とは違って、まともなハンターさんです」