小説ですよ〜
□夜空に咲く一輪の花
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キミを待たせるにはいかないと、急いで待ち合わせの場所に向かったのは良いが、到着してみると、待ち合わせの三十分も前だった。
どれだけ期待してるんだろうと、少し恥ずかしくなり木の幹にもたれかかった。
そのとき、楽しそうに腕を組んで歩くカップルが通り過ぎた。その彼女は、可愛らしい浴衣を着こなしていた。
やっぱり、夏祭りなんだし、浴衣が良いよなぁ。
そんなことを思いながら、頭の中に思い浮かんでくるのはキミの浴衣姿。
「何、妄想してるんだよ。俺は」
コツン。と軽く自分の頭を殴って、暴走しかけている頭に冷静さを戻させる。
ドン!
音につられて空を見ると、そこには一輪の花が咲いていた。
「……夏祭りが始まった」
それが合図だったらしく、夏祭りの会場になっている公園が一際賑やかになった。
別に、特別な催し物があるわけでもない。
それでも、この町に住んでいる人にとっては、大切な夏祭りが始まった。
「…………おーい」
会場に向かっている人波を眺めていると、キミの声が聞こえた。
笑顔でその声の方を向いた僕は、かけるべき声を失った。