小説ですよ〜
□それぞれの夢
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第一章
僕の目の前には、一枚のなんでもない紙がある。
ただの紙なのに、僕にとってそれは、『ただの』ではないのだ。
うんうん。と唸りながら頭を悩ませていると、コツンッと誰かが僕の頭を小突いてきた。
「なに、悩んでるの?」 「うん?…なんだ、亜美か。いや、これになにを書こうかなって思ってな」
ピラッと紙を持ち上げて亜美に見せた。
亜美は不思議そうにそれを見て、納得したように笑った。
「なんだ、進路調査じゃない」
そう、これが普通の中校生の反応だ。あまり深く考えていないのか、それともしっかりと進路が決まっているかの、二つに一つだ。 でも、俺はそんなに簡単には考えていないんだ。
「なんだって、なんだよ。俺は真剣なんだよ」
亜美の軽い言葉に、僕は少しだけムカッときてしまった。
俺が少しだけ怒った口調で言うと、亜美は驚いた表情になった。
「そ、そんなに怒らなくてもいいじゃない。まだまだ先のことなんだから考え過ぎなくてもいいんじゃない?」
「でもさ、やっぱり将来のことなんだから、しっかりと書きたいんだよ」
そう。自分自身のことなんだ。
でも、亜美の言い分はわかる。僕たちはまだ中学生なんだから、進路なんて曖昧だって構わないはずだ。適当に高校に進学したって、問題ないだろう。
そう。まだ将来を決めるのは早すぎる。高校に入学してからだって、遅いとはない。
わかってる。わかってるんだ。
僕は結局なにも書けずに今日の授業を終えてしまった。