小説ですよ〜

□この声が枯れるまで
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 急いで家に帰り、それぞれ必要な物を持ってくると、互いに頷いて確認してそのまま駆け足。
 十分くらい走ると、目的地に到着した。
 そこは公園。なんの変哲もない、ただの公園だ。
 いつもの場所に荷物を置き、準備を始める。
 俺たちは遊びに来た訳じゃない。練習しに来ているんだ。
 家から持って来た大きな入れ物の中から、古びたギターを取り出す。
 音調整を丁寧にする。
 隣では巧も同じように事をしている。
 俺の調整が先に終わり、巧の調整が終わるのを待っていると、数人の男女が楽しそうに笑いながら近付いて来た。
 だが、適度に距離を開けた場所で立ち止まった。
 片手を上げて挨拶すると、全員が同じように挨拶を返してきた。
 数分も経たずに、巧も調整を終えて準備を完了した。
「……よしっ、今日も張り切って歌うぞ」
 俺の声を合図に、俺と巧はギターを引き始めた。
 さっきの人たちの方を見ると、いつの間にか人数が増えていた。
 始めは騒ついていたが、俺たちの歌が始まると水を打ったように静かになっていた。
 俺たちのこれは、ストリートライブというやつだ。3ヶ月前から毎日やってるからか、最近ではかなり多くのギャラリーが集まってきたんだ。
 幸いなことに、この公園は住宅街から離れており、近所さんに迷惑をかける心配はない。
 何度か場所を変えたんだが、熱烈なファンはどこまでも着いて来るんだ。
 だから、こういう住宅街から離れている場所に変えたんだ。
 ただ巧と笑いながら練習するのも楽しいけど、こうやっていろんな人に見てもらうのも楽しいんだ。

 うん。悪くない。

 いつもは、夜9時から夜10時までの1時間だけ歌っている。
 歌っている間は、みんな静かに聞き入り、曲の間で盛大な拍手を送ってくれる。
 …………それにしても多いな。また増えたのか?
 そういえば、数日前に歌い終わった後に休憩していると、ギャラリーの人たちがなんか言ってたなぁ。
「やっぱり、凜たちが一番上手いよなぁ。他の連中は話にならないよな」
「本当ね。プロとかにならないのかな?絶対にいけるよねぇ」
 言ってくれるのは結構多いけど、かなり嬉しいものだ。
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