小説ですよ〜
□二人の合図
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「ナイススマッシュ」
「……うん」
笑顔を向けると、笑顔で返してくれる。
無表情で試合をしているキミしか知らなかったから、なんだかとても新鮮。
サーブ権が移動して、私がサーブするようになった。
左手を握りこぶしにして背中に回し、そこで小指を立てる。
これは、ショートサーブを打つ合図。これとは逆に、親指を立てるとロングサーブを打つ合図になる。
私たち二人だけの合図ではなく、大抵のダブルスのパートナーが使ってる。
なるべくネット擦れ擦れを通過させるようにサーブを打つ。
これで、いきなり攻撃されることはない。返してきても、ロブかスピードの遅いプッシュ、もしくはヘアピンしかない。
それくらいなら、何とかしてくれる。
そう考えていると、相手はヘアピンを選択した。
それをまたヘアピンで返すと、またヘアピンが返ってきた。それもスピンのかかった返すのが難しいヘアピンが。
なんとかそれもヘアピンで返そうとするけど、スピンのせいでネットに引っ掛けてしまった。