モンスターハンター 蒼風の導き
□序章 電光
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「…………」
不意に聞こえてきたのは、女性の悲鳴だった。それに続くように、モンスターの咆哮が響き渡る。
森の雑音に掻き消されてしまいそうな小さな悲鳴に反応したのは、一人の女ハンターだった。
採取をしていた薬草を腰のポーチに仕舞い、悲鳴の聞こえた方向に向かって走り始める。
背には体と不釣合いなほど大きな大剣が掛けられており、走るたびにカャシャカシャと音を立てている。
ハンター。
様々なモンスターを、各々が得意とする武具を用いて狩猟することで生計を立てている者たちだ。
「ニャッ!ご主人さま。エリア6の方角ですニャ」
「うん。わかってる」
草むらから姿を現し、彼女の後ろを走り始める猫のような動物。彼らは、アイルーと呼ばれる獣人族だ。
友好的な性格の者が多く、人々の生活の中で、様々な面で欠かすことの出来ない大切なパートナー的存在だ。
そしてそれは、ハンターにとっても同じことが言える。
体力のことなど気にしていないかのように、二人は全力で疾走する。
何度か、鬱そうと茂る木々が彼女たちの体を叩くが、意に介した風はない。
それを助けているのが、彼女たちの身に付けた服にある。
彼女らが身に付けた服は、マフモフ装備と呼ばれ、防寒に適した造りなっている。
それだけではなく、耐久性にも優れてり、転んだり引っ掛けた程度では破れることはない。
モンスターの素材で造られたそれは、ある地方では伝統的な装備として知られ、新米ハンターに送られたりすることもある。
そんな装備に身を包み、全力で疾走する彼女らの視界が、急に開ける。
木々が円形状に立ち並び、ドームのような形を作り上げている。中央には大きな切り株があり、かつてそこに大木があったとこを証明している。
そんなエリアの調度反対側。彼女たちから一番遠いところに、悲鳴の主であろう女性の姿がる。
それと同時に、一匹のモンスターの姿も確認することが出来た。