小説ですよ〜
□夜空に咲く一輪の花
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真夏のある日、僕は携帯電話を前に腕を組んで考え込んでいた。
今日の夜にある夏祭りにキミを誘うための電話をしようと思っているのに、緊張してしまって体が動かなくなっている。
同じクラスになってからずっと、僕はキミに惹かれていた。でも、友達という心地よい関係を壊したくなくて、この気持ちに蓋をしていた。
我慢してたけど、やっぱり限界だ。
僕は、どうしてもこの気持ちを抑えておけない。
そっと、携帯電話に手を伸ばす。
失敗したときのことを考えると、泣きたくなるくらい怖い。それでも、僕はこの気持ちを伝えると決めた。だから、今日は絶対に逃げない。
「…………はい。もしもし」
数回のコールの後、キミの声が聞こえた。
緊張している体とは裏腹に、自然と言葉は口から漏れていた。
「…あのさ、今日の夜なんだけど、何か用事ってある?」
「今晩?………ううん。何もないよ。どうしたの?」
明るいキミの声に、僕の気持ちは救われた気がした。それと同時に、今晩の予定がないことがわかって、自然と笑みがこぼれる。
「……ならさ、一緒に夏祭りに行かないかな?」
「夏祭り?………う〜〜ん」
微妙な反応に、ドキッとした。
いきなり、ストレートに言いすぎたのだろうか?もう少し、遠回りに言った方が良かったのかな?でも、友達なんだし、遠回しに誘った方が変な感じになるんじゃ。
受話器の向こうで、誰かと話してる声が聞こえるけど、何を話しているのかまでは聞こえない。
しばらく沈黙が続いた後、
「いいよ。せっかくのお誘いだしね」
いつもの明るい声で答えてくれた。
飛び上がりそうなほどの嬉しさと同時に、もの凄い脱力感を感じた。
勇気を出して誘ってみてよかった。
その後、待ち合わせの時間と場所を指定してから電話を切った。
「よっしゃ!!」
心からのガッツポーズ。
普段は信じていない神様にでも、今ならお礼を言っても良いような気がしてくる。