DR NL

□奇跡は起きない
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○設定
主人公はどこぞの財閥の御令嬢。
そんな彼女が恋をしたのは、一般市民の宍戸さん。

※ 主人公も宍戸さんも名前が出てきません




――――――




時は明治、豪勢な時代。そして私はとある財閥の長女。
とはいっても、ただただ政略結婚の為に産まれた、何の価値もないただの女。所詮私は、父上の道具でしかありはしないのだ。
でも最近、私はとある男に恋をした。同じ学校で、同じクラスだった彼。私を道具ではなく一人の人間として、女として見てくれる彼に私はどんどん惹かれていった。



「……ああ、羨ましい」



窓から下を覗けば、女の子達がきゃっきゃとはしゃいで通りすぎていくのが見える。

何故私は、あの子達のようになれなかったのだろうか。何故、自由に感情を持って自由に行動することができないのだろうか。
なぜ道具である私に感情というものが備わっていたのだろうか。



「私は、私は…っ!あの人が…宍戸さんが好きだったのにっ…!」


気がつけば私の手は勝手に動いていて、窓ガラスを勢いよく叩き割っていた。
爽快感。血が少し出てしまったけれど。



「お嬢様っ!」


音を聞きつけた執事達が私の元へやってくる。
ああ、とても美形ね。よく仕事ができるわ。私の手を宝石でも扱うように優しくとって。

でも、貴方達は所詮それだけじゃない。
婚約者であるあの人もそう。何でもできるのだとしても、私を心から揺るがすような何かが欠けている。

彼みたいに、私をまっすぐに見つめてはくれやしない。




「誰か、私をここから…っ!」



狂ったように叫ぶ私を取り押さえる執事達。それを扉付近で眺める父上。
その口元を醜く歪ませて私に言ったその言葉を、私は二度と忘れはしない。



「お前は所詮、籠の中の鳥だ。
お前が恋したあの男は、自由に羽ばたく女をみつくろってやったらすぐにそちらへ飛んで行ったよ。
お前に少し気をかけていたようだが、男とは所詮そのようなものよ」


窓の外を指さすから、私は執事達の手を払いのけて下を見る。
そこには先程の女達はいなくて、代わりに、愛しい彼の後姿があった。

隣に、女の人を連れて。




「現実を見ろ」



私は父の方へ向き、睨みつける。
父は知らん顔で、更に笑ってこう言った。





「奇跡は起きない」





それを言われてしまったら、私はもう彼を諦めることしかできないじゃないか。




(婚約者である彼の友人)
(そうして紹介された時)
(私は奇跡を信じたくなった)
(だけど、すべて、遅かった)



――――――――――


風は確かにボクを見ていた様提出。

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