Novel

□ダイヤモンドの恋 〜 Eternal Love
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2009・11・10 / PM5:00 東京 青山 

***

「――― その健やかなるときも、病めるときも ―――」

神父が誓いの台詞を読み上げ始めた。

あっという間に美しい賛美歌や聖書の朗読まで終え、ここまできてしまった。

ついさっき父の腕をとってバージンロードを歩いたばかりなのに。

隣を見上げると、私の横に背の高い男性が立っていた。私の夫となる男性だ。その横顔は凛々しく、絵になるほど美しい。
見蕩れてしまうとは、こういうことを言うのだろう。長身の彼のタキシード姿は結婚カタログのモデルよりもさまになっていた。

なんだか本当に信じられない。

自分が結婚するなんて。

ううん、本当に結婚出来るなんて。

もしも、あの夜のコトが無かったら…

私達は、今ここにはいなかったはずだ。

いや、それ以前に、私が修二に騙されなければ、私の隣には、この男ではなくて修二がいたはずなのだ。

それなのに、今隣にいるのは・・・別の男。
人生何が起こるのかはわからない。
今隣にいるのは結婚を約束した元カレではなくて、ついこの間までお世話になっていた仕事先のドクターなのだから…。

彼の名前は篠崎徹、35歳。
彼は民間病院に勤務する有能な医師で、専門は外科。以前は有名な国立癌センターに勤めていたらしいが、半年前からこの病院で働いている。
前の病院を辞めた理由は未だ不明。
普段血なまぐさい仕事をしている所為か、その性格は悪魔に匹敵するほどのドSで、俺様主義。よく私をこき使う。
そして医者のくせにヘビースモーカーで甘いものが嫌い。以前、看護婦から貰ったチョコレートを甘いもの好きじゃないから、という理由で私にくれたことがある。
以上、これが私の知っている篠崎徹だ。

ようは恋人同士が知っているようなことを、何一つ知らないということなのだ。そして恐らく彼はこれ以上に私のことを何一つ知らない。知っているとしたら私が猫舌で熱いものが飲めない、ということくらいだろう。

じゃあ何でそんな二人が結婚することになったのか、ということになる。
それは一ヶ月半前までさかのぼらなければ、わからない。




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