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□しあわせの確認
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薄暗い部屋で、密度を増す空気の中。
ただ、お互いの息づかいとか、水音とか、ひたすらに相手を求める声に溺れながら
乱れたシーツと、憂夜さんから与えられる絶え間ない熱に包まれて、意識を手放す瞬間
(あぁ…いっそこのまま融けあって、ひとつになれたらいいのに…。)
そんな事が頭をよぎった…。
遠くから聞こえてくる雨音に、ゆっくりと意識が呼び戻される。
(…今日は雨か。)
ぼんやりと思いながらも、包まれている心地よい温もりに、考えを放棄しようとしたとき、自分が彼の腕の中で眠っていた事に気が付いた。
「そのまま、寝ちゃったか…。」
肌に触れる空気から、何も身に着けていないことを悟り、慌てて着ていたものを探そうと身をよじってみるけれど、しっかりと抱え込むように腕を回されているせいでうまく身動きができない。
「起こしたら、かわいそうだよね…。」
少し上にある安らかな寝顔を見て、ベッドから抜け出す事を断念した晶は、未だ起きそうな気配のない憂夜を見つめながら、取り留めもなく考えていた。
「いい男だよねぇ…。」
人目をひく外見に、隙のない身のこなし。
常に冷静沈着で頼りがいがあって…、
でも、義理堅かったり、情に厚かったり、いい意味で男っぽい部分がある人だし。
今は、ホストではないにもかかわらず、彼を目当てにインディゴへ通う女性が少なくないことは、彼がどれほど魅力的な男性かを証明しているのだろうとも思う。
「ほんっと、なんか腹立つくらい、いい男だよね…。」
考えているうちに、なんだか切なくなってきたから、
ごまかすようにそう口にしてみたけれど、ため息が漏れた。
一緒にいればいるほど好きになる。
でも、好きになればなるほど、失うことへの恐怖も増していく。
司のように、消えてしまったら…。
あんな風に裏切られる事はなくとも、他の女性に気持ちが移る日がきたら…。
ふと、昨夜、頭をよぎったことを思い出す。
(ひとつになれたらいいのに…。)
ひとつだったら…失わずにすむのだろうか?
この人が苦しいときには、同じ想いを分け合えるのだろうか…?
それならば、ひとつがいい。
不可能だとわかりきっていても…。
襲ってくる不安から逃げようと、憂夜の胸元へぴったりと頬をよせ、規則正しい心臓の音を聞きながら呟いた。
「ひとつがいい…。
何で、別々なんだろう?」