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□貴女の風邪はどこから?
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何のへんてつもない午後。
インディゴを訪れたオーナー塩谷は、店へ入った所で何故か佇んでいた。

「おいっ、うちはホストクラブだったよなぁ…。
いつからカップルが愛を囁くようなバーになったんだ?」

入り口を掃除していたポンサックをつかまえると奥のカウンターを指差して呟いた。

そこには、カウンターに腰掛ける晶とその横に寄り添うように立つ憂夜の姿。

一見いつもと同じだが、その距離が異様に近い。
しかも、晶が憂夜に何か話しかけているが、憂夜の耳元で囁くように話しをしている。
憂夜の方も晶が話そうとすると晶の方へ顔を近づけて話を聞いている。
時折、微笑みあう姿はまさに恋人同士である。

「エ〜ト、店長カゼヒイタネ。」
「風邪とあのいちゃつきぶりに何の関係があんだ?」
塩谷が問いただしたところでジョン太が近づいてきて、
「何か、のどにきたらしいっすよ。
声が出ね〜って辛そうでした。」
と答えた。
「ほぅ〜風邪ねぇ…」
納得のいくような、いかないような気分で返事をしたときだった。

憂夜が晶に何か話しかけた。
それは、特別なことではない。
ただ、晶の耳元へ顔を寄せ甘く微笑みながら囁く姿を見た瞬間、塩谷は一つの疑問を口にした。

「おい、憂夜は風邪じゃないよな…?」





end

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