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□オモイシル(晶)
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「お姉ちゃん、おはよう。」

目が覚めてリビングへ行くと、貴子がカフェオレを渡してくれた。

「ありがとう。」
甘さを控えたカフェオレが体を暖めてくれる。



「今日は、少し冷えていますから体が暖まるブレンドにしてみました。」
そうティーカップを手に微笑む憂夜さんをふと思い浮かべる。




私は、今、インディゴに来て初めて、まとまった休みをもらい
ドイツにいる妹に会いに来ている。


「ねぇ、今日はどこに出掛ける?」

「そうねぇ…。」

返事をしながら、手が微妙にサイズの合わない指輪を弄ぶ。
出発の日、お守り代わりにと、憂夜さんの小指から抜かれ、私の指に収められた。

落としたら困るし、ネックレスに通そうかとも思ったけれど、憂夜さんが手を取って、つけてくれた指輪を自分で外す気にならず、結局そのままつけている。

おかげで、何処へ行っても、何を見ても、意識がこの指輪から離れる事がない。


「ねぇ、気になってたんだけどさ…」

貴子に声を掛けられ、顔を向けると、何やら面白いものでも見るように私を見詰めていた。


「その指輪、あのマネージャーさんの?」
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