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□甘いのはどちら?
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彼女は、俺の想いを受け入れてくれたし、
たとえ他の男が心を寄せようとも、
簡単にそれになびくような女性ではないことは理解している。
それでも、やはり彼女の口から他の男のことが語られれば、独占欲とか嫉妬心とか、そんなものが自分を覆っていくのを感じてしまう。
「あっ、ん〜っ!」
つい考えに囚われていたが、晶さんの声にならない声で我に返り、慌てて振り向いた。
すると、食べていくうちに形が崩れたのか
シュークリームから中身がこぼれ彼女の指をクリームが伝っていた。
最後のひとくちを頬張っている彼女を見て、思わずクスリと笑ってしまい、ティッシュの箱を手に近づくと足元に屈んだ。
「何、笑ってんのよ…。」
頬を染めて、悪態を吐くあまりの可愛らしさに、
ついティッシュの箱を脇へ追いやり、クリームの付いた手を取った。
予想外の行動に首を傾けている彼女の指へ唇を近づけると、さすがに何か察したのかビクリとして伺うような表情をする。
「私にも食べさせて下さい。」
そう言って、彼女の瞳をみつめたまま、指に付いたクリームを1本ずつ丁寧に舐め取っていく。
「ゆっ…憂夜…さん…。」
見る見る耳まで真っ赤になった晶さんが、上擦った声で俺の名を呼び手を引こうとするからますます嗜虐心が煽られる。
彼女の座るソファーの左右の肘掛に両手を付き、追い詰めるように顔を近づけると、
「まだ、食べたりません…。」
そう囁いて、唇をふさいだ。
その甘く柔らかな感触を貪るように味わっていると、裏口の方からにぎやかな声がしてきた。
(あぁ、残念…。)
後ろ髪を引かれる思いで唇を離し、
涙目で息が上がっている晶さんの耳元へ、
「ごちそうさまでした…。」
囁いてから身体を離した。
(おっはよ〜店長。
おっ、シュークリーム?美味そうじゃん。
これ、食っていいの?)
(店長おはよ…あっ、顔真っ赤ですよ。
風邪ですか?)
(…いいわよ。食べて。ぜ〜んぶ食べちゃえばいいのよっ。シュークリームなんて二度と食べるもんか〜っ。)
((何だあれ?))
end