戦国無双book

□西瓜
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「あの娘ですか?
そうですかねー…
なかなかいい線いってると思いますが…―」

左近は目を閉じる。
恐らくはくのいちを想像しているのだろう。

三成はそんな左近を見て、
更に顔をしかめる。

「ほぉ、話が早い。ならば左近、
そのくのいちをうまくかわして、幸村をここに連れてこい」

「は!?殿、それは無理です、
忍者から逃げ切れるわけありませんよ」

目を見開く左近。
それを見て愉快そうに笑う三成。
(正確には、"愉快そうに顔を歪めて不敵に笑う三成")

「それじゃぁ西瓜を持ってこい左近。それならば文句はないだろう」

三成はこれが狙いだったのか、
左近に優しく微笑む。


黒い。


「……はいはい、わかりましたよ…
まだそっちの方が何倍もマシです。
じゃ、西瓜があるか聞いてきますね、殿」

左近は スッと立ち上がる。

「あぁ、左近、ついでに頼みたいことがある」

三成は、左近が部屋から出る寸前を
見計らっていたかのように見えた。

左近は振り返り、 なんでしょう?
と言う。

「俺の着物を取ってこい。この服は暑すぎる。
お前の着物と同じ様な物でよい」

「それくらい自分でやってくださいよ〜…」

左近は再び はぁ〜…
と大きなため息を吐く。

三成はムッとした。

「フン…ならばよい、俺は裾をまくるからな」

そう言って袖と袴の裾を一気に引き上げる。

普段は日に当たらない腕や脚が、
白く輝いて艶やかに――

「ぅゎあああ!!
殿、それだけは勘弁して下さい!!!」

左近はダダダッと駆けて、
三成の裾という裾を下げる。

「左近、これが嫌ならば俺の着物を―」

「―殿、もう、本当に、
取ってきますから、それだけは勘弁して下さい…!!
この城にはそういう色物が好きな男がいるんですから…!!
殿なんてそこら辺にいるだけでもう格好の標的なんですよっ!!!」

左近の目が血走る。
このような、身勝手な三成を守るのに
相当苦労をしているだろう事が窺えた。

三成は一瞬ニヤッと笑う。


ああ、黒い。





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