戦国無双book

□西瓜
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「左近、西瓜が食べたい」

「は、西瓜、ですか」




西瓜




今日はまだ梅雨だというのに、
真夏日のように暑かった。
ジメジメではなく、
ムシムシとした暑さだ。


いつものように暑苦しい格好をしていた石田三成は、
左近に扇子で扇がせながら言った。

左近は はぁ〜…
と大きいため息を吐く。


「殿、西瓜は今ここにありませんよ。

それにまだ梅雨です。
我慢してください。
左近がこうして殿を扇いで差し上げてるんですから、
今日は本当に勘弁してください」

左近は顔には出さないが、
面倒ごとが増えないよう必死だ。


左近はいつもの格好ではなく、
軽装だったが、やはり暑いものは暑い。
更に扇がされているのだから、恐らくは今の三成より暑いのではなかろうか。

「左近、俺は食べたいのだ…!!」

「どこかでその言葉聞きましたね。あ、関ヶ原ですか。もうその言葉には騙されませんよ」

おねだり作戦が失敗して、
三成は「チッ」と舌打ちする。

「つまらぬ。幸村でも呼ぶか」

目で訴える。

「…殿。呼ぶのであれば自分で言ってください」

「なぜ俺がそのようなことをせねばならぬ」

「すぐ隣の部屋にいるじゃぁないですか、すぐ隣に!!」

左近は壁を指差した。

「ぁあ、そう言えばそうだな。
だが、あのくのいちが俺は苦手だ」

三成は、以前あったくのいちとの言い合いを想像したのか、顔をしかめる。
そしてまた何か思いだしたのか、更に顔をしかめた。






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