戦国無双book
□西瓜
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「―…なんだこの光景は」
翌日、三成に呼ばれて城に来た兼続は目を疑った。
「気にするな兼続、座れ」
三成に手招きされ、
仕方なく座ったが、まだ納得いかない。
部屋の殆どが崩壊している。
襖は何処かへ飛んで行っており、吹き抜け状態だ。
そこらに木片やら、紙屑やら、
はたまた衣服の端やらが落ちている。
この部屋にだけ竜巻が起きた。
そう言われてもおかしくない程に
めちゃくちゃに荒れていた。
「幸村、一体何があった?」
幸村に聞く。
「……私にも、何が何だか…」
困っている幸村を見て、兼続は追求を止めた。
仕方なく視線を泳がせていると、
くのいちと瞳が合った。
「先に言っておきますけど、
アタシに聞かれても無駄ですよん♪
幸村様がわかんないですもの、
アタシがわかる訳ないじゃないですか♪」
事件の発端者であるくのいちは黙秘し、
兼続に意味ありな視線を向ける。
「…これは、突き止めない方が良いような気がするが…義と愛がそれを拒む――」
「―突き止めないでくださいよ…アンタも死にますよ?」
後ろに気配を感じて振り向くと、
包帯だらけ、傷だらけの島左近がそこにいた。
左腕は折れており、生き残っている右手で、
既に切ってある西瓜をのせたお盆を握っていた。
「島殿!?その傷は一体――」
左近は何も言わず苦笑いし、三成をちらりと伺った。
三成は立て膝をして肘をついている。
「殿、西瓜持って来ましたよ」
左近はぎこちなくお盆を置く。
それは決して、三成への恐怖や嫌悪からではない。
「左近、ご苦労だ」
三成はパッと胡座を掻いた。
兼続は沈黙を決め込み、
くのいちは
「(ちょ〜っとやりすぎた?)」
と多少反省の色を現している。
「……食べないのか?」
三成が促す。
そわそわしてはいるが、誰も西瓜を取ろうとはしない。
いや、取れないのだろう。
「みなさん、俺の事は気にせずにどうぞ食べて下さい。
これきっとうまいですよ?」
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