戦国無双book

□西瓜
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「左近」


左近が部屋を出る直前、再び呼ばれた。

もう、逃れられない。

振り返る時に、
左近はくのいちと瞳が合った。

その顔の楽しそうな事。
左近は、全てはくのいちの計算のうちだったと、今知った。

「――……なんでしょう、殿?」

恐怖に引きつる左近。
しかし、顔には出さない。

「―――………貴様は――」

「――……はい?」

左近は思わず聞き返す。
本当に聞こえなかったのだ。
己の大失態に左近は死を覚悟した。



「貴様は己の面を見たことがあるのかっ!!!!!!」



大音量。
左近は数歩後退った。

今回は本当に殺される――!!


三成はどこからか"志那都神扇"
を取り出す。

「―ちょっ、殿!!!それ第四武器じゃないですか!!!
俺本当に死にますよ!!」

左近の視界に幸村とくのいちが映った。
幸村は確実に状況がわかっていないだろう。
ただ、本能的にくのいちを庇っていた。
くのいちは本当に楽しそうにニヤニヤしている。
ヒラヒラと、左近に小さく手を振った。

左近は大人ながら、自分の状況に泣けてきた。

「安心しろ左近、流石に"神遊扇"は使わん」

「安心できませんよ!!!!」

左近は逃げようとして襖に手を掛けたが、止めた。
襖を開ける時間などない。
それに、三成に背を向けた瞬間にきっと無双奥義を使われるだろう。

「よくわかっているじゃないか左近」

「なんで心が読めるんですか!!」

左近は半泣きで部屋の隅に逃げる。
これは、もう死を覚悟しよう。

「無駄だ、左近」

三成はその場から動かない。
左近はジリジリと間合いを計る。

そして気付いた。
三成の目が据わっている事に。

本気だ。戦闘モードだ。

「――…三十六計逃げるにしかず…ってね…!!」

左近は0.1%の生存率を信じて走り出す。
襖なんて突き破ればいい。
命の方が何倍も大事――――



「――目障りなのだよ!!!」



背後に聞こえる声。
振り向く瞬間に見えた光。

「(無双奥義じゃなくて、秘奥義ですか…――)」

左近が覚えているのは、
ここまでだった――――――



―――
――






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