戦国無双book
□西瓜
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「っ、幸村!」
三成は思わず扇子で口元を隠す。
長い橙色の髪の間から見える瞳は、
嬉しいのか、困っているのか、複雑な揺れ方をしていた。
左近は口をポケッと小さく開いたまま、
閉じることができない。
「(おいおい、こんな殿初めて見たぞ…)」
いつも威張っている三成が、
こんな表情をするのを左近は知らなかった。
…身震いがした。
「幸村様〜♪
アタシの事探してくれてたんですねっ」
くのいちは幸村に飛び付く。
「こ、こらくのいち、三成殿も左近殿もいるというのに…!!///」
当の幸村は、それ程嫌がってもいない。
くのいちを剥がそうともしない。
あぁ、本当に好きなんだな
左近はその光景を眺めつつ、
三成の機嫌の変化を感じつつ思った。
右側からドス黒いオーラ…
チラリと三成を盗み見た左近は、
自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。
「と…と、殿…?」
黒い
途轍もなく黒い
左近は命の危機を感じた。
「…す、いか……西瓜…
西瓜取ってきますね、殿〜…」
そろりと立ち上がる。
三成は何も言わない。
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