イナズマイレブン+夢小説

□第一章
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「兄さん!」
私は兄さんに近寄った。
けど、そこにいたのは死んだ魚のような目をしている兄さん。
父さんが行っていたとおりだ。だから……。

だから私は…………。


「…!」
目が覚めた。あの時の、あの時の兄さんの顔を夢で見るなんて…。
「…いい気分じゃないな」
さて、今日から行くあの学校に行く準備をしなきゃ。
ガチャッ。
「優?おはよう」
「に、兄さん!?」
部屋のドアを開けると、兄の次郎がいた。
やっぱり目が死んでいる。
アイツの、影山のせいで…!
「優?おはよう、は?」
「あ、…おはよう」
「おはよう」
兄さんはニコッと笑う。
が、その笑顔はぎこちない。心からの笑顔じゃない。
「そういえば、優は今日から学校だよね?」
「うん」
「たしか、雷門…だっけ?」
「うん」
「へぇ」
その後は沈黙。すごい静か。
「なら……気をつけてね」
「……?」
兄さんは耳元でそう言った。
どういう意味だろうか?
とりあえず、準備をしよう。

雷門中。
「うわぁ…すっごいボロボロ…」
確かにボロボロな学校だ。
「(しかし、こっちでも男装するなんて…)」
とりあえず、そこら辺の生徒に職員室がどこか聞こう。
近くを水色髪のポニーテール少年が通った。
「あの…」
「ん、何だ?」
うん、優しそう。
「職員室ってどこ?」
「もしかして、転校生か?」
「まぁ…」
「よかったら、案内しようか?」
「…よろしく頼むよ」
その少年はニコッと笑うと「ついてきてくれ」と言った。
久しぶりに心からの笑顔、というものを見たような気がする。

「あ、君何年?」
「1年ですけど」
「へ〜。何部希望?」
「あ〜…、一応サッカー部です」
「じゃあ、俺とは今後仲良くするってわけか」
「……サッカー部なんですか?」
少年はまた笑った。
「まぁね。元は陸上部だったんだけど、円堂を見てたらさ」
「円堂…?サッカー部のキャプテンですか?」
「あぁ。っと、話している間に着いたぞ、職員室」
「ホントだ。有難う御座いました。…えっと」
「あ、俺は風丸。風丸一郎太だ。君は?」
「俺は佐久間優です」
「優か」
風丸は「じゃ、放課後むかえにいくから」と言ってクラスに向かった。

放課後。
「お〜い、優〜!」
「(マジで来やがった…)」
風丸が満笑の笑みを浮かべながらクラスに来た。
「あ、風丸さん!」
クラスにいるサッカー部員、少林寺が耳元で騒ぐ。
まぁ、可愛いからいいケド。
「やぁ、少林。優を捕まえてくれて有難う」
「いえいえ、ぜんぜん大丈夫ですよ!」
何だこの可愛い生物。
「優、部室に行こうか?」
「あ、お願いします」
「よし。行くぞ、少林」
「はい!」

サッカー部部室。
「うわぁ…ボ」
「ボロいとか言うなよ」
「う…」
コンコン。
「お、風丸!ソイツが言っていた優か?」
「あぁ」
いきなり呼び捨てかよ。
「初めまして。アメリカに留学していた佐久間優です。アメリカでは“林の王子”と呼ばれていました」
一応先輩だし、敬語じゃなきゃ駄目かな。
「へぇ。俺は円堂守!早速だけどサッカーやろうぜ!」
……もう帰りたい。

「よし!思いっきりこい!」
「……わかりました」
思いっきりってことは…。
「アレをしてもいいんだよね?」
ドリブルを始める。
「行かせないッス…!」
「…じゃま!」
壁山を避ける。
「なっ…!」
「速い!?」
私はいつのまにか円堂の前にいた。
「よし!」
何がよし!だ。
「いくよ…。《リーフブレイク》!」
「…!!」
円堂はボールを止められず、地面に叩きつけられた。
「ちょ、大丈夫ですか!?思いっきりって言ってたからてっきり…」
「…スゲー…」
「…は?」
「スッゲーな、お前!」
「は、はぁ…」
何だこいつ…。
私のシュートを受けて、なんでこんな笑顔でいられるんだ!?
「これなら、明日の帝国との練習試合も大丈夫だな」
「そうでやんすね!」
え…?
「帝国って、あの鬼道先輩がいる?」
「そうそう…て、先輩?」

『なら……気をつけてね』

「………そういうことか…!だから…」
「ど、どうしたんだ?」
「悪いです、先輩。帝国と戦っちゃ」
「…?どうしてだよ」
「…はぁ。帝国には、俺の兄さんがいて、そして俺は、留学する前は帝国にいたんですよ」
しばらくの沈黙。
そして叫び声。
「マジかよ!?」
「だから、奴らは俺の癖、プレーの仕方、全部知ってます。だから…」
「だからなんだよ?」
円堂がきょとんとした顔で言う。
「正々堂々戦えばいいじゃないか。癖とかプレーの仕方なんか関係ないじゃんか」
「…は?」
「さ、今日はもう遅いから帰ろうぜ!じゃな、みんな!」
「あ、ちょ…」

「はぁ…」
「ま、落ち込むなよ」
風丸が励ましてくれる。
「あの人、馬鹿なんですか?」
「サッカー馬鹿だな」
「はぁ…」
「…明日、来るのか?」
「……さぁ、わかりません。ケド、あの人、一緒にいて飽きなさそうだし」
「まぁな。それが円堂だからな。…じゃ、俺の家、こっちだから。明日な」
「あ、はい。さよなら…」

「…兄さん」
「ん?何?」
「朝の、そういう意味だったんですね」
次郎がペンギンの図鑑を見ながら答える。
「まぁね。そういやさ、今日学校でお前が帰ってきたって言ったら、総帥、どんな顔してたと思う?」
「さぁ?」
次郎は図鑑をパタンと閉じると、耳元で
「笑ってたよ。また、手に入れなくてはな…、って、いいながら」
「…………あの人…まだ諦めて…」
「ないと思うよ?」
次郎は私から離れる。
「だから、明日は気をつけろよ。…おやすみ」
「…おやすみ」

次の日。
「やっぱりこないッスよ」
「そうかなぁ…?」
雷門メンバーは優を待っていた。
「でもくると思うぜ?」
「確かに、くると思うよ。君たちが待っている俺」
……………………。
「…いつの間にいたんだ」
「ずっといたけど」
私は立った。
兄さんを取り戻すため。
鬼道さんや源王を取り戻すため。
「いこうか、キャプテン」
「…あぁ!!」
待っててね、兄さん。
必ず、取り戻すから…!

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