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□愛故に僕は
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ふわふわと風に揺れる柔らかそうな髪の毛。
光をめいいっぱい受け入れてキラキラと輝く琥珀色の瞳。
小ぶりないで立ちではあるがその佇まいは
どこか威厳がありしっかりとして見える。
そんな綱吉を骸はとても愛していた…はずなのだ。

「今日も随分楽しそうに話していらっしゃいましたね。」

静かなテノールが密室に響く。

「えっと…何の事…?」
「何の事…?」

骸は綱吉の両肩を掴み壁際へと追いやっていた。
頭一つ分はしっかりと違う身長差がある為
綱吉は骸の陰に隠れて全く見えない。

「とぼけないで下さい。
昨日も今日もあの雲雀恭弥と楽しげに
話していたじゃありませんか。」

骸の瞳はしっかりと綱吉を見つめていた。
肩に置かれた手には徐々に圧力がかかり
ギリギリと綱吉の肩を圧迫する。

「痛いよ、骸…。」
「話を逸らさないでくれませんか?」

再度骸は綱吉を壁へと押し付けた。
じわじわと広がる痛みに綱吉は眉をしかめる。

「君はいつもいつも嗚呼やって
色んな輩に笑顔を振りまいて…
僕の事を愛していると言った途端にアレですか?
随分と酷い事をしてくれますよね…。
それとも……僕のもだと言う自覚が足りませんでしたか?」
「!…っカハッ…!」

骸は片方の手を綱吉の首元へと移動させ締め上げた。
革製の手袋がギチッと鈍い音を立てる。
抵抗しようと綱吉が骸の腕へ手をやると
肩に置かれていた骸のもう片方の手がそれを払いのけ
首元へとその場所を変えた。

「御仕置きが必要ですね?
どうしましょう?このまま締め上げ続けて見ますか?」

綱吉の顔は徐々に赤くなり
首元からジリジリと圧迫感に襲われた。
目がうるみ始め、生理的な涙が一筋零れ落ちる。
骸はその様子を見て微笑しそっと両の手を離した。
肺に大量の空気が一気に送り込まれ
咽るという形で身体が一時的な拒否反応を起こす。
床へとしゃがみこみ荒い咳を抑えながら
空気を再び吸い込んだ。
まだ熱が残る首元へ手を当て
綱吉は自らを見下ろす影を見上げた。

「なんだよいきなりこんな事して!!」
「御仕置きだと言ったでしょう?
自ら望んで僕のものになりたいって言ったくせに
早々に他の奴のところへふらふらする
君が悪いんじゃないですか。」

上から下ろされる視線は酷く冷たいもので
骸が本当に怒っているのだと分った綱吉は
この場から一度立ち去った方が賢明だと判断し
床に手を付き、立ちあがろうとした…その瞬間
骸の足が綱吉の鳩尾部分を容赦なく蹴り上げ
外部から内臓を突き上げられる感覚に綱吉は悶絶し
その場に倒れ込み蹲った。

「君もとんだ馬鹿ですよね…。
もう少し従順な返答をくれていればそうならずに済んだものを…。」

骸はその場へ腰を下ろし
綱吉の髪の毛を掴み上げ顔を上へと向かせ
自らと向き合う様にさせた。
骸のルビーとサファイアをはめ込んだ様な瞳には光がなく
鈍い輝きを放つだけだった。
どこか微笑んでいる様なその目元と
柔らかい弧を描く口元。
薄い唇が開かれたその隙間から赤い舌が見え隠れしていた。

「君は今も昔もずっと僕のものだ。
君もそれを充分に理解しているでしょう?
もし、君が僕から離れていくなんて事になったら…
うっかり君の周りの人間を全員殺してしまう…
なんて事にもなりかねませんからね?」


整った顔の奥底に潜むものは
  淀んで腐敗しきった独占欲と――…


愛故に僕は


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