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□Una ragnatela
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コンクリートで造られた大きな部屋に
一人の男が座り込んでいた。
少年と言うには大きく
男性と言うには幼い小さな青年。
首、腕、足につけられた体の大きさとは不釣り合いな鎖を
ガシャガシャと鳴らし必死にもがく姿は
まるで蜘蛛の巣に絡まった蝶…
もう逃げ場など無いと言う事を知りながらも
蝶は必死に自分の羽に絡まった蜘蛛の糸をほどこうと必死だった。

「無駄ですよ、今の君にその鎖を外す事は出来ない」
「っ…骸、お前っ!」

大きく鎖を揺らし、綱吉は骸に突っ掛かった。
だが到底骸が立っている場所に届くはずもない。
綱吉をこの部屋に閉じ込めた張本人
骸は満足げな笑みを浮かべて綱吉の元へと近づいた。

「骸、何でこんなことするんだよ…!」
「何故?そんな事君が一番理解しているはずだ」

ひんやりと冷たい空気が部屋を漂う。
圧倒的な何かに綱吉は体を強張らせた。
骸は綱吉の首に繋がっている鎖を引き寄せ
自分の元へと引っ張った。
小さな綱吉の体はバランスを崩し
飛び込むかのように骸の胸の中へと倒れ込む。

「ねぇ、綱吉、僕は君が好きなんです」

甘い、低めのテノールの声が綱吉の耳へ届く。

「綱吉は僕の事が嫌いですか…?」
「っ…、そんな事言ってない!」

骸は綱吉の顎を持ち上げ自分と目を合わさせた。
まるで宝石を埋め込んだかのように
魅力的なルビーとサファイア色のオッドアイは
綱吉を捕らえて離さなかった。

骸の薄い唇がまた開く。

「じゃあどうして僕だけを見てくれないんですか?」

君は何時も周りの人間に笑顔を振りまく。
それが君の良いところでもあり
悪いことろだと骸は思っていた。
自分以外の奴に笑顔も
その姿さえも見せなくて良い。
君の姿を知る者は僕だけで良いと…

「もう、君には僕しかいない、そうでしょう?」
「そんな事、無い!」
「おや?どうしてそう言いきれるのですか?」
「だってみんな昨日までずっと俺の傍に…!」
「"昨日"まででしょう…?」

綱吉の言葉を遮るかのように
骸の声が綱吉の頭へと流れ込んでくる

「昨日…ま、で…?」
「そうですよ、昨日までは…」


今の君は一人だ。
一人で無いと言うのなら
その赤い手はなんなのですか…?


綱吉はふと自分の手に目をやった。
もうすでに乾いてしまっているものの
赤黒く変色し手にこびりついているソレはまぎれもなく

人の血液…





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