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□四月の誕生花
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1日 カブ 慈愛



現在、朝の7時。
このまま起こせば、学校には余裕で間に合う。

このまま…起こせば…だけれど。

「ガク〜、オハヨーゴザイマス、起きてください。」

普段は、絶対に女の子には手をあげない紳士な男。

こんなやつの幼馴染みに生まれてしまった自分の運命を呪ってやりたい。

…いや、悪い事ばっかりじゃないけれど…。

あぁ、普段は手を挙げませんよ。普段はね。

けど、寝起きのこの幼馴染み…。

この男のおかげで、喧嘩が強くなりましたよ。
いえ、冗談です。喧嘩なんかしません、女の子だもん。

私のいいたい事は、避けるスキルが人より遥かに
上達したという事なんです。

ガクを起こすのは命がけ。
顔に当たったら…間違いなくお嫁に行けなくなるお顔になります。

「…ガク〜?出席日数がぎりぎりなのは誰ですか〜?」

そう言いながらゆっさゆっさと肩を揺らす。

それはもう、びくびくしながら。

「…う…っさい…。あと、五分…」

綺麗なお顔で眠るガク。
まぁ、なんて羨ましい。

…私も眠くなってきました。

「…ほら!ガク、起きて!学校行っちゃうよ!」

「…。」

目がぱっちり開いて、私の方を見る。
あ、やばい、そう思った次の瞬間…

「…うぅわ!」

手をグイと引っ張られて、ベッドに引き込まれる。

「…ガク〜?」

ぎゅっと抱き込まれて身動きが取れなくなる。

「うるさい、寝る。おやすみ。」

はぁ、とため息をつくガク。
私の頭に顔を埋めて動かなくなった。

「…今日は休みってことで…。」

私も自分に言い訳をして目を閉じる。

この腕から抜け出せるもんなら抜け出してみてくださいよ…。

ガクの首筋に顔を埋めて眠った。

「…ガクのにおい…」

私はもう一度大きくため息をついた。
はぁ、安心しきったような顔しちゃってさ…。
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