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□第五話 少しの軋み
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風邪の一件から、
君との距離は、
すこぉし縮まった気がする。

君は前にも増して笑顔を見せてくれるようになった。
僕が家に突然行くと、
君は少し驚いたような顔して、
すぐ笑顔になるんだ。

そんな笑顔に僕は癒されて。

外で逢うより、僕が家に行く方が多くなった。
彼女の仕事が、すごく立て込んでるみたいで。
僕も、殺人スケジュールだけど。

外に出るよりか、飾ってなくて良いじゃない?
勿論、おめかししている名無しさんちゃんも
可愛いけれど。

「僕に気にしないで、仕事、途中なんでしょ?」

「じゃ、ちょっとだけ…」

仕事中の
眼鏡をかけて、
長い黒い髪の毛を高い所で結った君は
いつもと雰囲気がちがって、
ギャップが凄いイイね。

僕に背を向けて、
真剣な目をして、パソコンに向かう君。

うなじ、色っぽい。

キスしたいなぁ。

雑念捨てろ、僕!

紅茶でも飲もう。

僕は勝手にキッチン借りる。
すごくない?
何回も来てやっとお許しが出たんだよ。

それほど、君と出逢ってもう
6ヶ月ぐらい?
2ヶ月ぐらい、僕のレコーディングとか
立て込んで、あんまり逢えなかったけれど。

久しぶりにあった君は少し顔色悪くて、
体調、悪そうだった。

その日、君を僕の家に連れ帰って。
連れ帰ってって、なんか卑猥だな(笑)
僕のベッドで眠る君を見ていたんだけれど。
愛しい人が、ベッドに眠ってたら、どうする?
男なら、襲うだろ!

…いや、僕は紳士だからね。
そんな事しないよ。
うん。

抱きしめて、キスしただけだから!
それ以外はしてません。

キスしたらいけないだろって?
うるさいよ!

でも、
キスしたのがいけなかったのかな。
君への思いは、募るばかりで。
君の、唇の感触を思い出して、
無意識に自分の唇触って、
ため息零す、毎日だった。

「あれ、今日、何処いくん?」

「先生んとこ。」

「あぁ名無しさんちゃんのとこいくの?」

仕事終わりにYOUが話しかけてきた。
今日は名無しさんちゃんの家に行こうかなーって思ってて。
もちろん、突然ね?

驚いた顔、見るの好きだし。

名無しさんちゃんの事、YOUの前で名前で言うのは
なんかこう、むかつくから、
僕は人前では彼女の事を先生って呼んでる。
むかつくけどYOUは名無しさんちゃんと逢ってるから
ちゃん付けで呼んでるんだよね。
名無しさんちゃんとYOUは映画の趣味が合うみたいで、
僕よく、映画の話になると
はぶられる訳。
YOU見てろよ…
後でオマエ、トレーニングでぼっこぼこだからな!

「じゃ、」

「あ、まってー。俺もいく。」

ふにゃふにゃした笑顔で笑いやがって!
僕の至福の時間、奪う気かよ!

そんなわけで、

「いらっしゃい、YOUくん、楽斗さん。」

なんでYOUいるんだよ!?
てゆーかYOUはくん付けだし!

僕がぶつぶつ言ってると

「楽斗さん?どうかしました?」

首を傾けながら、僕に尋ねてくる。

「なんでもないよ、ほらYOUさっさと入れ!」



僕らが、ソファでくつろいでいると、

ピンポーン

来客を知らせる音。

「ごめんなさい、多分、担当さんです。
 打ち合わせしなくちゃいけなくて…」

「僕ら、帰った方が良い?」

YOUと顔を見合わせていると、

「ううん、大丈夫です。くつろいでて下さいね?」

そういうとトタトタと走って、
扉へ行ってしまった。

君と編集さんはそのまま、
書斎に引っ込んでしまって。

YOUと二人きり。

YOUは眠そうに目、こすってるし(笑)

ふぁ〜あ、眠いなぁ…
ここ、最近ほんとに、徹夜でさ?
ふぁ〜あ、ちょ〜っだけ、目を休めるだけ?

「…斗さぁ〜ん?楽斗さん?」

なんだよ、せっかく寝てるって言うのにさ。
ぶっ飛ばしてやろうか、あ?

「なんだよ、うるせぇーな馬鹿やろ…」

「あれ?楽斗さん?」

「わぁあ!名無しさんちゃん?!ごめん、ごめん人違いだよ!」

「ふふ〜裏楽斗さん出現?」

良いもの見ちゃったな、なんて口元押さえながら笑ってる。

好きな人の前ではさ
カッコつけたいものでしょ?男なんてものはさ。

けど…名無しさんちゃんの前では、
なんか弱いところか、さらけ出してる気がする。

名無しさんちゃんとのこの距離は心地いいんだ。
本当に。

魅力的だなと思った女の子とは
三日と明けず、その女の子との、躯の相性確かめてきた僕。
心で、触れ合うより、躯で先に触れ合った方が早くない?
色々と。

でも、彼女とは、
う〜んなんて言うだろ?

キスしたら分かった。
彼女とは、躯の相性いいんだろうなって。

変態?そうさ、変態さ。
僕は、変態さ!


「あれ、YOUは?」

「帰っちゃいましたよー?」

僕が寝てる間に?何しにきたんだ、あいつ?

「YOUくんにはパソコンのことで、
 ちょっと相談乗ってもらったんです。」

「そうなの?初耳なんだけど?」

「クスクス、打ち合わせ終わりましたよ?」

「僕、何時間寝てた?」

「1時間と少し…かな?」

時計を見ながら、彼女が言う。

これじゃあ、僕、寝にきたみたいじゃん。

「何か、食べます?」

「お腹、ぺこぺこなんだよね。」

なんせ僕、胃袋10個あるからさ。

「うーん、何が良いですかー?」

「何でも良いよ。お腹減ってるから何でも美味しいよ。」

「しっつれぇー!私の料理がまずいみたいな言い草です!」

「ごめん、ごめん。」

「鍋にでもしましょっか、簡単だし。」

彼女の作る鍋は美味しかった。
まぁ鍋なんてまずく作れないけどさ(笑)

後から聞いた事だけれど、
YOUが居た理由は、パソコンの事だけじゃ無かった。

今思えば、ココからだった気がする。
彼女と僕を取り巻く環境が
変わっていったのは。

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