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□第2章 生きる理由
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「あ、おきました?」

はぁ…、なんだか疲れてる?
ふぅ〜…。

「竹神?…大丈夫?」

「大丈夫だよ、なに?まだ何か言わなくちゃいけない訳?」

頭にチップ突っ込まれて…。
なんだよ…もう。

「いえ、私の方からなにか、という訳じゃなくて。」

「じゃ、なに?」

僕の手を握りながら喋る名無しさん

「説得…です。」

「説得?」

「そう、生きる説得。」

生きる…?くだらない…。
死んだ方がましだよ。

「生きて、竹神。
 貴方は生きなくちゃいけないわ…」

「なに、なんで?」

僕は死ぬのは怖くない。
死など無意味だ。

あの、宮瀬久美子っていう女が
面白い事を起こしてくれる。

きっとね。

「なにか、生きる理由を探してみない?
 ねぇ、お願いよ。貴方が生きる事で将来、何人もの人が死なずに済むの。」

「くだらない。僕が今ここで、オマエを殺して僕も死ねばそれで終わりだ!」

くだらないくだらない!!殺してやる!!

「まって、お願い!怒っちゃ駄目!…し〜。」

椅子から立ち上がって急に抱きしめてくる。

「噛み付いてもイイから…落ち着いて。怒っちゃ駄目よ…し〜。」

僕の頭を撫でてくる。

なんでだろ、看守は殺したくて殺したくて…

あいつらと喋る時だってムカついてムカついて、
ペンを突き刺してやった。
その後、噛み付いてやって…

だけど、彼女にはそんな気持ちにはならない。

「生きて…みない?」

「僕は、生きてるだけで罪だ。」

微笑みながら頭を撫で続ける君。

「そう、そうね…。」

「彼らを殺した事を反省する気だって…僕には無いよ?」

僕がそう言うと、もっと強い力で抱きしめてきた。

「大丈夫…、私が傍に居てあげるから…。お願い、生きてみよう?」











昔、僕がずっと欲しかったもの。




どんなに人を殺しても、



どんなに躯にその身を含んでも…。


得られなかった、


このぬくもり。



許されない僕は、



生きる事を選んだ。



彼女のぬくもりに触れて…



生きてみよう…って思ったんだ。


許されるため…に。

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