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□第十二話 殺す事の出来ない想い
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YOUさんから、電話で連絡をもらってから、
とっても悩んだ。
行っていいのかな…って。怖いなぁって。

『なんか声、元気無いな?大丈夫?』

「大丈夫ですよ。」

『ほんま?仕事大変ちゃうの?』

「いーえ大丈夫ですよ、とっても充実してます。」

バレるわけにはいかない。無理にでも元気に振る舞って
楽斗さんのファンの方の事を隠さなければならないのに…

弱い自分に思わず笑いが出た。


『名無しさんがそう言うなら…
 あ、LIVEの件で電話したんやった!忘れるとこやった!で、どう来れそう?』


「私が行っていいんですか?
 席とか、凄く争奪戦って聞きましたし…
 ファンの方とか…」

「名無しさんちゃんがきてくれると、俺もうれしいんやけど…
 関係者席やから、お呼ばれした人しか来ぇへんし
 大丈夫やで!」

「…う〜…」

「来るに決定!来なかったら怒るで!」

ツーツーツーッ

切れてるし(笑)

せっかく、呼んでくれたんだ。
行かなくちゃ!

弱い自分に喝を入れる為にも!

ファンの人の誤解を解く為にも!

いや…行ったらなおかつ誤解されちゃうかなぁ…。

楽斗さん、元気だろうか…。



「怪我、無いように。皆、注意してね…
 気合い入れてくぞーー!!」

「「ぉおおおう!!」」

本番前の、気合い入れ。
皆、テンションいい感じだよ。

さて、行こうか…!!



本番前、僕は自分の楽屋で最後のチェックをしてた。
衣装もオッケー、メイクもおっけー、段取りは完璧。
体調もかなりいい方だ。

少し、目をつぶって気をためてる僕に、
YOUが近寄ってきた。

小さな、花束を持って。

「これ、オマエに。」

「なにこれ、YOU、僕に花なんてどうかした?
 ついに、そっちの道に…」

「ちゃうちゃう!なに言ってんねん!気持ちわるっ!」

気持ち悪いのは僕だって。

「で、誰から?」

「…名無しさんちゃんから。ほら、持って!」

「あ…ありがと、YOU。あのさ…
 えっと、名無しさんは?」

動揺がバレないように、静かに話す。

「これ渡して、行っちゃったみたい。」

小さな花束だったけれど。
優しい花は本当に綺麗で。

君の優しさに、哀しくなった。

君にキスした事、君は許してくれたのかな。
忘れてしまったかな…。

女々しい僕が顔をのぞかせるけれど、

「本番十分前です!スタンバイよろしくお願いします!」

すぐ、仕事モードに切り替わる僕。

かっこ悪いとこ、見せる訳にはいかないからね。

僕の、友達には…さ。

やっと、振り切る事が出来そうだ。



初めて、の経験ばかりで、少し緊張してしまう。
えっと、ここでいいんだよね?

きょろきょろしてあたりを見回す。


会場にはボレロが流れていて、
開演を今か今かと待っているファンの子達の熱気で溢れてる。

ラヴェルもこんな所で使われるなんて思ってなかったろうなぁ(笑)

…なんか、すごいなぁ。

さっきから、サングラスの小柄な人の視線が気になる。

すこし、熱気に負けて、ため息をつくと、

「こんにちは。」

笑顔+関西弁で声をかけてきた、男の人。

「こんにちは、」

こんな所で声をかけられてどうして良いか分からないけど
一応、今出来る最大限の笑顔で応えた。

「LIVE初めて?」

「っはい、ほんと、すごいですねぇ…」

よく見ると、この人凄く綺麗なお顔をしてらっしゃる。
背は、私と同じぐらい?
というか、下手したら私の方がおっきいかも…

「はじめてが、がっちゃんのLIVEなんてラッキーやで?
 あ、でも、最初がこれだと、アカンかもなぁ(笑)」

「…がっちゃん?」

「せや、GACKTのことな?」

「がっちゃんのLIVEは他のアーティストとは
 ひと味も、ふた味も違うねん。」

がっちゃんて楽斗さんのこと呼ぶぐらいだから
仲の良い人なのかしら?

きょとーんと私がしてると、

「俺のこと知らん?ショックやわ〜〜
 ハイちゃん泣きそう…」

「わわ、えっと、ごめんなさい!えっと、」

わ、泣いてる!?肩、震えてます!
男の人、泣かしちゃった?

「なんて、うそ〜〜、びっくりした〜?」

ははっと笑いながら、

「L'Arc〜en〜CielのHYDEです。
 がっちゃんとは、長年親友やねんで。
 ハイちゃんって呼んで?」

手を差し出されたので、

「##NAME2##名無しさんです、初めまして、HYDEさん…」

固〜〜い!なんて、ちょっとぷんすかしながら
足を組み直すHYDEさん。
L'Arc〜en〜Cielさん!
プライベートの時を知らなかったから
分からなかった。
駄目だな私(笑)

「あ、名無しさんちゃん誰の知り合い?YOUくん?」

「はい、YOUくんに呼んでいただきました。」

「あ、そーなんだ。なんかそんな気、したんだよね。」

「…どうしてですか?」

なんというか、と私の目を見ながらHYDEさんが言う。

「YOUくんと纏ってるオーラが似てるというか。
 ふわふわ〜んとしてるというか、」

天然ってこと?う〜ん、自分じゃよく分かんないなぁ…。

「でも、こんな美…さん、がっちゃん……
 …そうやのになぁ…」

「…はい?」

周りの音にまぎれてしまって、HYDEさんの声がよく
聞こえなかった。

「なんでもないで!またそれにしても、がっちゃん押してんなぁ…」

携帯の電源をオフにしながらHYDEさんが言った。

「ま、時間通りに始まらんのが、がっちゃんらしいわ。」

クスクスと笑いながら話す。
楽斗さんとHYDEさんがとっても仲が良いんだろうなってことが
私でも分かった。

「楽斗さんのLIVE…いつもこうなんですか?」

「そうやなぁ…。まぁ、こだわりが半端無いからなぁ…」

こだわり…。仕事に対して、すごく誠実なんだなと感心した。

ボレロが静かに鳴り止む。

「ん!はじまんで!」

胸が、どきどきする。

静かに、幕が開いた。



ファンの方達の声が反響する。

私は彼の世界観に、すぐに引き込まれた。

あまり聞いた事の無かった、彼の歌声。

…涙が、出そうになる。

LIVEって、本当に凄い。



んと、今は、楽斗さんとファンの方が掛け合いをしてる。

”GACKT~~!!!”

”きこえませぇぇ〜〜ん”

っていうのが、何回も続いて。

私は、座りながらほっと一息ついていた。

なんというか、人の熱気に当てられました…。

「大丈夫?」

顔を、覗き込みながらHYDEさんに声をかけられる。

「…はい、勿論です。」

『今日はねぇ〜、僕のお友達、来てますよ〜〜』

"だぁれ〜〜〜??"

『なに、聞きたい?聞きたい?』

マイク越しの楽斗さんの声が聞こえる。

今はえっと、MCっていう時?

それにしても、みんな凄いなぁ…息ぴったり。
メンバーの人も、ファンの人たちも…。

凄まじいまでの、一体感。

『出会いは映画…で。えっと、友達、というか凄い仲の良い…キス仲間の…』

””HYDEぉぉぉ!?”

『え!?そう!なんで分かったの(笑)
 皆、すごいなぁ〜HYDE〜居る〜?』

そういうと、楽斗さんはこっちを向いてを振る。

『HYDEぉぉ〜?』

スクリーンにHYDEさんが映る。
わぁ、あんな風になるんだ。

横の私が映ってしまうと不味いと思い、
少し体を横にしようと思ったけれど…

そうする前に映っちゃった。

あらースクリーンデビュー?

スクリーンを見ていた楽斗さんが一旦停止する。

でも、すぐに

『HYDE今日も可愛いなぁ〜』

スクリーン越しにHYDEさんが手を振る。

沸き上がるファンの人たち。

「…クスクス。キス仲間なんですか?」

「言ってるだけやで?まぁ、がっちゃん、結構誰にでもキスするからなぁ(笑)」

「ふぇえ〜…」

誰にでも…。やっぱり…。
そうだよね…。

『今日は、僕の大切な友達も来てるんだ…』

少し、視線を落として楽斗さんがふぅ…と一息つく。

『沢山話、聞いてもらってさ…。似たような仕事してるし…。
 今日、生まれて初めてのLIVE見に来てる。
 皆、初体験が僕なんて幸せだよなぁ〜!!??』

”しあわせーー!”

『ほんとね…きみたち凄いね…』

『ありがとうね、今日も始まるの遅れちゃって…
 お前ら!!!気愛入れてこーぜー!!』



彼の表現したいもの。
話しには聞いていたけれど、
これは本当に…

彼の頭の中を見たみたい(笑)

こんな事が頭の中にあるなら、
そりゃ一日の睡眠時間が2時間3時間になっちゃうのも
必然かもしれない。

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