レッド×イエロー
□空虚な空
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もう3月も終わると言うのに、息は白く道行く人は手袋をしていた。
そんな街をレッドは俯きながら歩いていた。
自分の愛しい人…イエロー…彼女は突然居なくなってしまった。
その日は雨が降っていた。レッドはいつものように自分の仲間…ポケモン達と練習をしていた。
そんな時だった。
ブ「レッド!」
ブルーがレッドのことを呼んだ。
いつもなら来ることさえ無いのに、そのブルーにいつものような余裕が見られなかった。
レ「どうした?」
レッドは軽い気持ちで聞いてしまった。
今思えば、そこで聞かなければ良かった。と思う。
自分はそこにいなくどこか…遠くに修行に行っていて、真実を知らなければ……と。
真実を知らずあの場所にいると信じ、そこにいる彼女を思うことが出来ればどんなに幸せだったことだろうそう思った。
だけど……俺は聞いてしまった。真実を…。
レ「イエロー!!」
レッドが大声で彼女の家に着いたときは、既に手遅れだった。
レ「なんで…なんでイエローがここで倒れてんだよ!今日は俺の練習の後、一緒に昼御飯食べる約束してたんだぞ!なんでだよ!!なんで……なんで……」
レッドは力任せにそばにあった机を叩いた。
ブ「落ち着いて、レッド。悲しいのは貴方だけじゃ無いのよ。」
ブルーが俯きながら言った。
グ「イエローは…お前に会いにいこうと歩いていたら、トキワの森の崖から落ちたんだ。」
グリーンが淡々と感情を押し出さずに言った。
レ「ごめんな、イエロー。俺なんかに付き合わせたせいでことになって……」
泣きながらレッドが言った。
そうするとブルーも泣き出した。
そんなブルーを優しく抱きしめながら、静かに泣くグリーン。
暫くして……
レ「俺……俺イエローに責任とってくる。」
そう言って、レッドは駆け出した。
グ「待て!レッド。お前まで死ぬな!!」
グリーンが普段では考えられない程の大声を出した。
しかし、レッドは止まらなかった。
グリーンも駆け出した。
そこはとてもぬかるんでいた。
レッドは深呼吸を一つすると、崖の下を見下げた。
そして………
レ「…俺…生きてる?」
レッドが薄目を開けた。
そこにはグリーンとグリーンのリザードンがいた。
レ「なんで……なんで死なせてくれないんだよ!」
レッドが泣きながら言った。
グ「お前が死んで、誰が喜ぶんだ!!イエローがそれを望むと思っているのか?」
レ「だってイエローは…俺のせいで、死んだんだぞ!俺が責任とって死ぬべきなんだ!!」
レッドが子供のように泣きじゃくっていると、グリーンは一足の靴をレッドに見せた。
グ「レッド。この靴何だか分かるか?」
レ「それは、俺がイエローにプレゼントした靴だよ。イエローは森に行くのが大好きだったから、丈夫な靴にしたんだ。」
グ「そうだ。イエローはお前にもらった靴だからって、雨の日でも履いていたんだ。そこまでお前のことを思ってくれている人が他にいるか?その人の最後のお願いは聞いてやれ。…死ぬな。」
それから一ヶ月。
レッドには分からなかった。
今自分が生きていることが。
愛しのイエローはもういない。
それなのに、何故俺はここにいるのだろう。
息は白く、空も白かった。そんな世界がとてもつまらなかった。
なにもかもが空虚で色褪せていた。
そして、ここにあの黄金に輝く彼女がいたらどんなに美しいだろう。
色褪せた世界で唯一輝いているもの。
それが欲しかった。
それさえあれば生きて行ける気がした。
だから街を歩く。
イエローを探すため。イエローを忘れるため。
空虚な空
それを今日も見上げ、生きて行く。