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□それでも好きなんて。
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彼は暴君になれると思う。




「…君、僕の話聞いてた?」




自分が気に入らない事は排除して
群れている者も排除する。



「聞いていましたけど…それは、」


そんな彼が僕に言った一言に少なからず表情が歪む。そんな言葉聞きたくもない。



『君…何でまだ群れてるの?気に入らない』



最初は言いたい事がよく分からなかったけれど。



(千種と犬の事を言っているのでしょうね…)



僕の数少ない"仲間"
気心が知れた、一緒に居ても不快ではない人間。


彼はそれすら嫌がる。


「雲雀君、彼らは…」


「何?」


ギロッと睨まれる。
きっと自分がこれから口にする言葉を察知したのだろう。聞きたくない、と言う態度をとられてしまった。



(彼らは僕にとって必要なんですよ…)



きっと、それを口にしてしまえば君は僕を罵倒するでしょう?


お互いに
分かっているから、聞かず
分かっているから、言えない


ふいに、雲雀君が座っていた椅子から立ち上がる。
カツカツと靴の音が響いて、僕に近付いてくる。


(折角、久し振りに逢えたと言うのに…)


いつもいつも、
嫌悪になってしまう。





やはり、
君と僕では…合わないのでしょうか





「骸、」


「えっ……ぐっ?!!」


名前を呼ばれて顔を上げようとするより早くみぞおちに鈍い痛みが走る。構えていなかった為に深く入ったらしく、口に何かが戻って来る感覚がした。

ふらついていると、足払いをされてその場に尻餅を突いた。


「ッ、げほっ…」


生理的に目に涙が浮かぶ。


(自分とした事が、油断した…)


床に座り込む自分の上に雲雀君は跨ぐように座り込み見下ろしてくる。


「…いったい…何なんですか、痛いじゃないですか」


「当たり前でしょ。本気で殴ったんだから」


「だから、何故…」


「別に、殴りたくなったから」


本当に彼は酷い。
僕に対して容赦がない。


否、昔の事を思い出せば嫌われても仕方無い事したのは自分。


それでも、何故か"雲雀恭弥"という人間が気になって惹かれて。



いつの間にか、
気が付けば傍にいる関係。


彼よりも僕の方が想いは上のようで、いつも雲雀君は素っ気ない。



(何故、僕に付き合ってくれているんでしょうね…)


そう思わずにはいられない。


本当は、
嫌われているのではないか、

何となくで人を殴るなんて好意の欠片すらないと思う。



「雲雀君は…僕の事、お嫌いのようですね」



それならば、何故…彼は僕に会ってくれるのだろう?



「………」


「もう…会いに来ません」



僕に仕返しをするチャンスでも窺っていたのだろうか…?



「君は相変わらず頭が馬鹿だね」



人が真面目に悩んでいると言うのに、本当に彼は冷たくて酷い人。


「僕が何で君が群れているのが嫌だと思う?」


「それは…貴方が群れは気に入らないからじゃ、」


「他の人間の群れと君は違うよ」



彼はそう言って僕の胸倉を掴む。顔が近い。息が…かかる。


「君は、僕のものでしょ」


「なに、を…」


「僕のものなのに他の人間と群れるなんて許さないよ」


「ひば…ッ」




彼は本当に酷い。
僕を突き落としてから、小さなアメダマを与えてくる。


キスに翻弄されて
柄じゃないけど照れてしまう。


こんなのは僕じゃない。
そう思いつつも居心地が良いと感じてしまう。


「…っ…ん」


「…そうそう、僕から離れるなんて言うのも許さないからね」


ニヤリと。
キスし終わってから笑って言う彼に僕は逃れられない。




先に惚れた弱み。
でも、彼も僕を想ってくれていたのが知れたから。




「離れられませんよ…」






これからも、きっと。










 

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