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□冬
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降り積もった雪に足をとられながらも船への帰り道を急ぐ。
私は寒いのが苦手だ。毛糸の帽子にマフラーぐるぐる巻き。みんなが呆れるほどに厚着をしたけれど寒いものは寒い。

しかし、手袋だけは外してきた。外気に晒され私の両手は痛いほど冷えきってしまったが、どうしてもこうしたい理由があったのだ。


「神威!ただいま」

帰還して真っ先に駆け込んだ彼の部屋。
おかえり、を言うまでは普段通りの表情だが、私が神威の手に飛び付くと少し驚いたようだった。

「うわ、冷たいな」

そうは言っても振り払われないのに気を良くした私は、最大の狙いを実行することにした。


彼の手はいつも冷たいから、一度は言ってみたかったんだ。


「神威の手、あったかい。ね、暖めて?」





2011年1月〜3月







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