血脈の狭間
□11 わたしの誇り
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わたしの誇り
本拠地の外観は廃れた町に溶け込むような廃墟そのものだったが、内部は拠点として機能するよう近代的に整備されていた。
オレンジ色の暗いライトが照らす中、神威はやはりここでも敵に止められることなく進んでいく。
「後続が来るはずです!わたしたちは将を討つことを優先しましょう!」
酸素不足で咳き込みそうになりながらも、那紗は声を張り上げた。
全力で走っても置いて行かれないのがやっとなのだ。身体能力の差を見せつけられるよう。
「強い奴と戦えればなんでもいいよ。弱いのと一々やるのも面倒だし」
などと言いつつ、目に入った敵はしっかり手にかける神威。
死ぬとわかっていて向かってくるほうもどうかしている。
…いや。これが彼らの忠誠なのだろうか。
負けるとわかっても主君に従うほどの。
そう考えるとなにか虚しさのようなものを感じてしまう。
しかし、那紗とて同情で刃が鈍るような、安い忠誠を誓ってはいない。
覚悟の証のように、神威が討ち漏らした敵の喉元を短刀で薙ぎ払って、ひたすらに神威の背を追いかける。
神威が恐らく最上階と思われる部屋の扉を吹き飛ばして突入し、その数秒後に那紗も駆け込んだ。
刹那、飛来する飛び道具の数々。
その程度のトラップは予想済みだ。軌跡を見極めて側転の要領で回避し、次に備える。
神威はというと、上に跳んで天井に穴を開け無理矢理掴まっている。
おのれ!とか、うおお!とか叫びながら部屋の奥から敵の一軍が現れる。
その中に一際目立つゴツい鎧を纏っている者がいた。
「アレが大将だね。もらうよ」
神威は軽々と敵軍の頭上を飛び越えると、目当ての大将のすぐ傍に着地する。
軽く回し蹴りを放つと、大将は何人かの部下を巻き添えにしながら勢いよく壁に打ち付けられた。
が、まだ仕留めてはいない。猛然と追撃する神威。
軍団は二手に分かれ、約半数ずつがそれぞれ那紗と神威に向かってくる。