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□春
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「うわあ…!綺麗…!」
木々の合間から光のカーテンが射し込む明るい森の中。
一際背の高い立派な樹の周りには絨毯のように色とりどりの小さな花が咲いている。
「気に入った?」
「うん!ここ、おとぎ話の中みたいだね、神威」
私は神威に満面の笑みを返す。
こんな素敵な場所に、神威が連れてきてくれた。二重の嬉しさが溢れて自然と身体が躍り出し、私はお花畑の中をくるくると跳ね回った。
適度な木陰があるから、日の光が注いでいても大丈夫。
「こういうのが好きそうだとは思ってたけど、こんなにはしゃぐだなんてね」
神威の笑顔も、心なしかいつもより柔らかい。
「ふふっ。あ、ねえ、鳥の鳴き声が聴こえるよ」
耳をすまし、どこだろう、と森を見回しても鳥の姿は見つからない。
私は口笛で鳥の鳴き声を真似してみた。意外と上手にできたと思う。仲間だと思って近付いてこないかな。
けれど、がんばって口笛を吹いたのに、鳥は先程までと変わらずに鳴いていた。どうやら鳥語での会話には失敗してしまったようだ。
私が少しがっかりしていると、後ろで神威が楽しそうにクスクスと笑っている。
そして、神威の腕が私の腰に後ろから回されて、ふわりと抱きしめられた。
森や花の香りよりも大好きな匂いに包まれる。
「かわいい鳥さん、つかまえた」
2011年4月〜6月