血脈の狭間

□1 事変の朝
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そうして意識は暗転し、現在に至るというわけだ。
回想を終え、那紗は青ざめる。

「まさか…修行って…!」

第七師団に行ってこいとでもいうのだろうか。状況からしてそうとしか思えない。
夜兎に混ざって働けだなんて無茶な。たった一人の辰羅の持つ力など高が知れているとは華陀自身も認めたではないか。

ぐるぐると思考を巡らせる那紗をおかしそうに眺めていた三つ編みの男は、2通の封筒を取り出した。

「寝てるあんたの上にコレが置いてあったよ」

宛名はそれぞれ『那紗』『第七師団長 神威』とある。華陀の字だ。

「あんたが那紗?」

頷いて、封筒を受け取る。
中身は簡潔な手紙だった。なにか現状を打破できるようなメッセージを期待して目を通す。

『せっかくの修行じゃ。励めよ。頃合いを見て呼び戻す』

「うそぉ…!?」

夜兎の中に放り込んでおいてなんて無慈悲な。
那紗はガクンと膝を折って項垂れた。


三つ編みは呑気にもう一通の封書をひらひらさせて、

「コレ読んでいい?」

「……一応、第七師団長さまに」

「俺なんだけど」

「!!ごめんなさ…!」

那紗はガバッと頭を下げた。
よりによって無礼を働いた相手は春雨最強の夜兎だったなんて。これからしばらく世話にならなければいけないというのに。

神威は那紗には目もくれず手紙を読んでいる。辰羅だったのか、などと呟きながら。
だが、その途中で顔つきが変わった。好戦的な不穏な笑顔に。

「ねえ」

「はっ!」

「ウチの副団長にもう話はつけてあるそうだから、あんたの扱いは阿伏兎に任せるよ」

「は、はい…」

「それと、死なせなきゃなんでもいいから煮るなり焼くなり好きにして鍛えてやってくれって書いてある」

「それ死んじゃうっ!あのほらわたし見ての通りか弱い辰羅ですから」

「『辰羅には珍しく馬鹿力の娘じゃ。単独での戦力としては我が師団随一よ』だって。楽しみだな。早くやり合おうよ」

「いやあああああ!華陀さまあああああ!!」



かくて、第四師団員那紗の第七師団での生活が始まった。










20110306
華陀も好き!

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