ひがんばな

□月明かりに照らされて
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目覚めると、もう真夜中だった。真ん丸なお月様は俺と白石様を照らしてる。隣ですやすやと気持ち良さそうに眠る白石様の頭を優しく撫でる。柔らかな白石様の髪の毛に、安らかな寝顔に自然と笑みがこぼれる。
ふと、自分の過去を巡ってみる。貧しい村だった。父親と母親と妹。父親は夜逃げ、母親は食料を取りに行くといい帰って来なかった。妹は母親がいなくなった20日後に死んだ。まだ3歳だった。妹が死んで俺は、その村から逃げた。そして今に至る。
汚い体を綺麗だと言ってくれる貴方が俺は愛おしい。でも俺は不安なんだ。いくら貴方が俺を綺麗だと言ってくれても俺は汚いんだ。
でも、貴方がいない世界なんていらない。今だけ、今だけは。白石様の口唇にそっと口づける。これからもずっと、永久に。




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