ばさらしょーと

□愛故だよ、愛故、
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相互記念 アカさまへ!



「佐助!」

「なあに?」

「クッキーか何か作ってくれぬか」


日曜日、いつも部活やバイトや幸村の世話やで多忙を極める佐助にとって、本当に久しぶりの休日であった。

だから朝もいつもよりゆっくり起きて、優雅な朝ごはんにコーヒーまで飲んで、好きな音楽をかけてそしてお気に入りの雑誌を広げて、思う限りの休日を存分に楽しんでいた。

それが1時間前のこと。

そして早くも突然の来訪者によって、その貴重な休日は一日の1/24を過ぎたあたりでぶち壊されようとしている


「なんで急にクッキー?」

「ホワイトデーのお返しが必要なのだ」

「なんで俺?」

「お前の作る菓子は旨い、と評判だからだ」


そういや、今年も旦那は大量のバレンタインチョコをもらっていた。
その中にはしっかり政宗や元親、慶次の逆チョコも混じっていた。オトメンで、こういう行事の時はちゃっかりお菓子を作っちゃう元親のそれは友チョコとカテゴリすることにして、政宗と慶次のそれはどう処理すべきか悩むところである。


「自分で作りなさい」

「俺は作り方をしらん」


…作り方を知らないのはしょうがない。だが、折角の気持ちのこもった手作りチョコ(下心は考慮しないものとする)だったのだから、どうせ作るなら幸村の手も加えた方がいいだろう


「だったら俺が教えたげるから、旦那が作りなよ」

「ああ!頼むぞ佐助!」

「りょーかい」



***


ガシャン!

「…うわっ」
「…今度はなに…?」



クッキー作りを始めてから20分。何故だろう、普段自分が作る時には絶対にしない音しか聞こえない。

20分前に旦那が作ることを提案し、そして旦那の依頼に快く返事した自分をすごく後悔した


誰だ一瞬でも旦那にチョコ渡した奴らに同情して旦那に作らせようとした奴

……俺か。


きちんと寸分の狂いもなく量ってあげた粉は台所を雪化粧よろしく彩ってくれているし、どうやったらそうなるのか溶かしたバターは粉の上から机にワックスをかけていた。べたべたの伴うその光沢は全くといっていいほど嬉しくない。

俺としたことが、旦那の"できない"を甘く見ていたようだ


「これは味になるかなー…」

「…ぬう。俺も食べたいと思わぬ」

「まあ女の子用のは量もあるからまた作るとして、これは政宗と慶次のにしちゃおうよ」

「…10人用のこれを、2人にか?」

「あいつらなら少々味が悪かろうがなんだろうが大丈夫だよ。旦那が作るもんならなんでも喜ぶさ。」


だからさっさと強めに焼いて終わらせちゃおう?少々焦げたくらいがあいつらには丁度いいよ


「…佐助はあいつらが嫌いなのか?」

「俺は旦那が好きだからねー」

「…こたえになっておらぬ」




その後、オーブンの前で旦那に2人のクッキーの番をさせる間に、女の子と元親用のクッキー生地を大量に作り、さらにタイマーを延長したオーブンの番をさせている間にそっこーで形を作った。


旦那が形を作った大きさのめ厚さも不揃いなそれは、適当な温度と時間の設定により、見事にミディアムレアになった。

真ん中がちょっと生焼けとかそんなミディアムレアじゃない。真ん中がちょっと食べ頃なだけの、そういう意味のミディアムレアだ。


旦那がそれを味見する前にラッピングをさせ、その間に大量の生地を綺麗に焼き上げた。ひとつ取って食べる。ついでに旦那の口にもほうり込む。


「旨いぞ佐助え!」


よし完璧だ
明日が楽しみでしょうがない



愛故だよ、愛故、


(猿、やってくれたな)
(何のはなしー?)
(クッキーだよ。昨日先に味見した小十郎が沈んだ)
(ああだから片倉先生お休みなの?)
(…ああ)
(ふふっ、いい気味)
(……さいてー)








***



ボツ案

「あいつらなら少々味が悪かろうがなんだろうが大丈夫だよ。旦那が作るもんならなんでも喜ぶさ。だから、三角コーナーに入れると思ってさ、ね?」

「…佐助はあいつらが嫌いなのか?」


さすがに生ゴミ処理比喩はあんまりだと思った(だがここでやらかす)








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