とれじゃー!

□道連れ的堕落者
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愛するもののためならば。
(その言葉を利用する人間なんてたくさんいると思うんだけど、)



道連れ的堕落者



「派手にやったねぇ」

佐助は血塗れになった政宗に笑顔で声をかけた。政宗は虚ろな目をして佐助を見ている。
彼の手には、いつも腰にしてある六本の刀ではなく、他の誰かの―――恐らく彼の従者のものだろうが―――刀が握られていた。政宗同様血に染まるそれは、今の今まで彼が何をしていたのかを静かに物語っていた。

「で、何人殺したの?真田の旦那だけじゃないよね」
「…猿、」

刀の切っ先を佐助に向けて、政宗は涙を流した。その目にいつもの強気はなく、悲しみだけが宿っている。
やれやれ、と佐助は肩をすくめた。

「何々、俺まで殺す気?」
「…お前が、お前が殺せって、」
「言ったよ?でも旦那以外に関しては、俺様なーんにも知らないからね」

佐助は楽しそうに笑って、でも、と続けた。

「いやぁまさか本当に殺しちゃうとは思わなかったよ。俺様って愛されてるー」

政宗は返す言葉もなく、ただ絶望とともに立ち尽くしていた。




『ねぇ、独眼竜の旦那。アンタさ、俺のこと好きでしょ』
『な、に言ってんだ、お前っ』
『バレバレだよ。分かりやすいもん、アンタ』
『……』
『じゃあさ、どれくらい俺のこと好き?』
『どれくらいって』
『実はさー、最近ちょっと悩みがあってさー、』
『…』
『…俺のお願い、聞いてくれる?』




「お前がっ、お前が、恨まれてるって、殺されるって言うからっ、」
「そりゃあ真田の旦那にはそうだけどさー。別にアンタの従者さんまで殺せとは言ってないし」
「っ、」

佐助はゆっくり政宗に歩み寄り、刀の刃に手を添えた。

「この刀が触れたのは、真田の旦那の血、アンタの従者さんの血。他にもウチの部下の血とか、そっちの部下の血とか、」

かたかたとふるえる刀。それを避けて、佐助は政宗の頬に己の唇を寄せる。

「ありがとう、独眼竜の旦那。アンタに想いを寄せる人間も、アンタを大切にしている人間も、余計な口出ししてくる奴らも、みんなみんな、消してくれて」


゙アイシテルヨ。゙



刀が床に落ちる音がする。
政宗の声にならない叫び声が、延々と響いて、







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