ショウセツ


□ある夏の日の夢
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「近くに公園のある駅といえば、あそこ位ですかね」
「もし良かったらさ、一緒に車に乗って案内してくれない?」

私は一瞬戸惑った。
知らない男性の車に1人で乗るなんて危険だ。
頭の隅ではいけないことだと認識していた。
けれども彼は優しく微笑むのでつい気を許してしまった。


「いいですよ」
私は微笑みながら彼に言った。
そして自転車を適当なところにとめて、案内されるがままに車の助手席に乗った。


助手席に座ると彼は私にシートベルトを付けてくれた。
知らない男性と二人で緊張してしまう。
しかし、緊張よりも少しいけないことをしているようなスリルが私を襲った。
それは本のページを開くときのような興奮と似ていた。




「めっちゃ親切やな。出会えて嬉しいわ」
「私も出会えて嬉しいです。とっても良い人ですし」

お互いのことを褒めながら、車は私が案内する駅へ向かった。



「仕事の人の家に訪ねなきゃいけないんだけど道を忘れちゃってね。カーナビには入力していたんだけど、この前カーナビのデータが全部消えちゃって」
「大変ですね。あの公園の近くに駅があるんですがここじゃないですか?」

彼は公園を見ると残念そうに
「ごめん、ここじゃないみたい」
と言った。


「そうですか。困ったなぁ。ここ以外公園が近くにある駅は知らないんですが」



彼は車を元来た道に引き返しながら少し黙った。
ふと私のほうにキラキラした目を向けた彼は言った。

「もう今日は駅を探すのは止めよう!俺の記憶も曖昧で探してもらうの悪いから。その代わり一緒にドライブに行こうよ」
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