ショウセツ


□ある夏の日の夢
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サンダルが脱げた。
キラキラ光るビーズの付いたそれは、自転車のペダルを漕いでいた左足から落ちていった。
「まじかよ…」
私は自転車をその場に停め、周りを見渡した。
田んぼと道路に挟まれた歩道に挟まれた歩道に佇む私を見ている人はいないようだ。


自転車を下り右足だけでヒョコヒョコと跳びながらサンダルを取りに行く。
その滑稽な姿に自分自身を一笑しながらサンダルを履いた。



自転車の元へ戻ろうと歩み始めると、男性の声に呼び止められた。



「すみません」

前方には私に近づいてくる、茶髪の男性がいた。
きれいなブラウンの髪は、そこだけ光が当たっているように光って見えた。
黒縁の眼鏡を掛けたその男性は整った顔を少し歪めていた。



「道を教えてもらいたいんですが」

私は眼鏡をかけているせいか知的に見えるらしい。
そのせいで、今までたくさんの人に道を尋ねられてきた。
本当は方向音痴な私だが、できる限りの返答をしようと彼に微笑んだ。

「どこへ行きたいんですか?」


「駅を探しているんです。近くに公園のある」
「それなら多分…」
「ちょっと待って、地図を取ってくるね」
彼は車に置いてある地図を取りに行った。
私は彼の後に付いて行った。




「この地域はここらだよね?」
地図をめくる彼の指はどこも荒れていずとても綺麗だった。
「多分ここら辺ですよ」
私は地図を指差しながら彼を見た。



「めっちゃ良い子じゃん。彼氏とかいるの?」
「いやいや、いませんよー」
私は首を振った。
共学の高校に通っているが、男子とか必要最低限した話てこなかった私は彼氏がいない。
中学の頃は私の容姿を馬鹿にし、見下している男子しか学校にはいなかった。
よって私は今までお付き合いをする以前に、人を好きになったことすらなかったのだ。



「えー、俺めっちゃタイプなんだけど」
「いやいや、何を言ってるんですかー」


彼は私にしきりに甘い言葉をかけてきた。
それに戸惑いながらも悪い気はしない私は彼に惹かれていった。
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